テニスの王子様vol.2
□前髪
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「日吉クン、前髪切ったんとちゃう?」
「え、あ、はい。切りました」
昨日より
少し見えやすくなった瞳に
反転した自分が映っている。
前髪に触れてやると
長い睫毛が影を落とし
ほんのわずかに
頬が桜色に染まった。
「良く分かるな白石。俺等でもわかんないぜ?」
たまたま隣にいた宍戸クンと鳳クンは
穴が空く勢いで前髪を見つめるも
やはり分かりにくいようで
眉をひそめた。
「やっていつもより目見やすいやん」
へらっと笑って
更に顔を寄せてやると
"近いです"と顔の間に手を挟まれた。
「もしかして、自分でやったん?」
U-17合宿所に
髪を整えてくれる施設はない。
そのため
髪に関しては町まで行かないと
整えるのは不可能だった。
「…はい。それが何か」
少々不機嫌な口調から
やはり切り過ぎたのだろう。
朝から無意識に触る仕草がよく目立った。
いつもは
前髪を盾代わりにしていたからか
ダイレクトに覗かれるのが恥ずかしいらしい。
ムスッとした頬に
映える赤が可愛らしかった。
「いや?かっこええなーって」
頭をくしゃっと撫でてやると
その手を払いもせずに
黙って俯いた。