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□■ジュノ妄想■ 「観覧車」
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「あ・・・もうダメ・・・許して・・・・」

懇願する月子の汗ばんだ顔が夕日に映えて美しい。誰もいない屋敷でのその行為は、それだけで背徳の匂いがする。

「駄目ですよ、月子さん。いくら先生のお嬢様でもそれは駄目だ。」

「だってもうあの人が帰ってくるかもしれないのに・・・あ・・・」

月子の夫で、父の片腕でもある隆は、周りから父の後継人と呼ばれていた。
一人娘の月子にとって政治家の父を持つということは政略結婚のために我が身を犠牲にすることだと知ってはいたが、それでも隆との結婚は空しい行為であったと後悔している。

「こんな時間に隆さんは帰ってこない・・・違いますか?」

「でも、悦子が・・・・」

「悦子さんは珍しく今日休暇をもらっている、そうですよね?だから僕はここにいるんです。」

イ・ジュノ。
男の本当の名前。
月子だけが知っている男の裏の名。
男には大きな秘密があった。

「もうこんなこと・・・やめにしたいの・・・ハァハァ・・・ぁん・・・」

男の指が月子を責め続ける。
汐見家の書斎の机は英国のアンティーク調のものだった。
その上に月子は熱くなった上半身を預けていた。
月子の剥き出しの両太腿はその男の両肩に乗せられていた。

「お父様も怪しむわ・・・秘書のあなたの居所がわからないと知ったら、お父様もお困りになるわ。」

「正々堂々とあなたのところへ行くと言ってきましたよ。一人ぼっちのあなたが心配だからってね。」

男は月子の言葉に臆すことなくその行為を続ける。
屋敷に入ってきていきなり月子を見つけると、サングラスも取らずにそのまま月子の身体を抱きかかえ、父親の書斎まで連れ去ったのだ。

「フ・・・月子さん、でもあなたのここはもっと欲しがってるんじゃないですか?」

「あ・・・・・・・」

父の机でこの男に嬲られる。
父の秘書でしかないこの男に。
しかしこの男の指のなんと甘美なことか。

上から見下ろされる。
こういう時はいつだってそうなのだ。
サングラスの向こうにある瞳はいつも冷たくて、何を考えているのかわからない。

そんな男にあの日、誘われたのだった。
自分の誕生日。
父も夫も仕事に忙しく、一人でその日を迎えた日の夜のことだった。
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