■ Books Maison ■
□■チャンソン&ジュンス妄想■ 「cafe@2pm」
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メグミからは、食事はカフェ内で済ませるから食べてこないように言われていた。
けれども最近では子供たちに合わせて五時半には済ます自分のお腹に自信がなくて、六時に家を出る前に軽くチーズトーストを食べてしまった。
「習慣って恐ろしいわ・・・。」
そんな自分に少し反省していると、向こうからミラノマダム風の女性が歩いてきた。
少しワイルドなタイトジャケットに、中は女性らしいワンピース。
ヒールは高く、きりっとした中に大人の女性らしさが匂う。
「え?メグミ!?」
「なぁに、それ?アキこそなによ、こないだとぜんぜん違うじゃないの。女って感じよ。」
「失礼ね!!!」
軽口をたたき合いながらお互いを褒め合うのが私たちの礼儀だ。
「ね、中に入りましょ。」
「いいけど・・・ここ開いてるの?誰も店内にいないけど・・・。」
実際店内は照明がついているだけで、中には誰もいないのだった。
「今夜はね、地下に用事があるのよ。」
「地下?」
「そう、このバックドアを通ってね・・・。」
「でもここ、従業員入口って書いてあるけど」
「いいの・・・だってここ会員制クラブの入り口なんですもの。」
「え・・・・・・・・?」
「いいから、入るわよ。」
強引に手を引かれ、入り口を通る。
薄暗い廊下を行くと地下に降りる細い階段があり、そこから大きな音楽が聞こえてきた。
ステージと思われる空間の上の方で青と白の照明がくるくると回っている。
そこには小柄な男性がひとりと大柄な男性がひとり、女装のような奇妙なコスチュームで踊っていた。
周りの女性客は大喜びだ。
よく見るとちらほらと男性客も見えるが、おしゃれ度合いと身のこなし、話し方から
総合するに多分彼らはゲイだ。
「ねぇ・・・ここってショーパブなの?」
盛り上がりを見せる店内で、私は声を張り上げて聞いた。
「あ〜アレ?違うわよ。あれも立派なショーよ。このお店を盛り上げるためのね。
彼ら本当は四人組のグループなのよ。彼らのバラードがとても素敵でね。」
「バラードねぇ・・・。」
革張りのソファーに通されながら、ステージを眺める。
とてもバラードグループには見えないのだけど。
「今日は私に案内させて。お店側には取材のお礼になんでもどうぞって言われてるの。
飲み物も食べ物も・・・そして男の子達も・・・なんちゃってねっ!」
「もう、やだな〜メグ〜!」
メグミと話している傍から背の高い男の子の気配がした。
「いらっしゃいませ、メグミさん。今日はお友達と一緒なんですか?」
ふわりと軽めのトワレの香りがした。
「あ、チャンソンくん。今日はお友達連れてきたよ。アキちゃんていうの。よろしくね。」
「あ・・・やだ・・・メグ・・・。」
「こんばんわ、アキ・・・さん?チャンソンです。」
あの子が・・・あの男の子が目の前に立っている。近くで見ると本当に背が高くて美しい。
「僕ら、これから踊るんです。食べる前にじっくり見てください。じゃ・・・。」
挨拶だけ済ますと彼はすっとテーブルの間を通り抜け、ステージに向かって歩いて行った。
そして他の五人もそれぞれいた場所から中央に集まってくるのだった。
何かが始まる予感・・・そしていきなり・・・
音楽が流れ出した。
手拍子のような早いリズムが
ステージの下から六本のポールが伸びてきて、天井でカチリと固定される音がすると、
天井から土砂降りのような雨を演出した水が流れ落ちてきた。
そしていきなり一人の男の子が前に出て呟き、美しい高音で歌いだした。
gidarida jichinda U Know...
gidaridaga jichinda eum
U Know neon neon naemamani u
上から一人ひとりに眩しいスポットライトが当たる。
暗闇に浮かぶ彼らは、先週この目で見た昼の光にキラキラ反射する無邪気な若者ではなかった。
それは・・・
上半身を汗で濡らしながら、ポールにその身体を擦りつけるように踊るポールダンサーの姿だった。
黒いタイトなズボンにブーツ姿がストイックで、裸の上半身とのギャップがどこかエロティック。
よく見れば身体のそこかしこに黒いチャコールの煤が擦りつけられている。
それは男らしい荒々しさの演出なのか、彼らの身体がより逞しく見える。
彼らは自分のパートを歌う順番が来るとセンターに来てくれるのだ。
ポールを上手に使ってつかず離れず踊っている。
女性のポールダンサーは見たことがあるけど、男性が踊るなんて・・・・。
ポールを掴むあの腕の太さ。。
身体を捻じるときに浮かぶ筋肉の線。
全てが刺激的過ぎて心臓がどきどきしてきた。
それに、なんて悩ましげな顔で踊るの。
どうしてあんな顔ができるんだろう?
あんな厚い胸の中で眠る女の子は一体どんな女の子なんだろう・・・?
これって・・・妄想???
胸の奥がどんどん苦しくなる。
嫌だ・・・なんだか・・・ちょっとむずむずする・・・
久しぶりに感じた身体の変化に、戸惑いを感じた。
そしてそれはそのままでは終わらなかった。