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□■チャンソン&ジュンス妄想■ 「cafe@2pm」
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ワンステージが終わると、その場からさっと散ったメンバーが一旦下がり、すぐにそのまま黄金色のシャンパンが注がれたグラスとともに客席に戻ってきた。
息もまだ切れた状態で、シャンパンをテーブルまで運んでくる演出だ。
私達のテーブルには、ジュンスが来てくれた。
「こんばんわ、メグミさん。僕らのステージどうでしたか?」
「すっごく良かったわ。ドキドキしちゃった。」
珍しく顔を赤らめているメグミがそこにいた。
「歌、とってもお上手なんですね、ジュンスさん。」
「アキ、ジュンスはメインボーカルなのよっ!当たり前じゃない!!」
ムキになるメグミに微笑みながらジュンスが答える。
「いいえ、嬉しいです。歌は僕の全てですから。ありがとうございます。」
丁寧にお辞儀をすると、ジュンスは艶のある視線を送りながらまたステージへと戻っていく。
「ちょっと、アキ!ジュンスに気に入られたんじゃないっ????」
だんだん鼻息が荒くなるメグミがおかしかった。
「あーそうか。めぐみはジュンスくんがお気に入りなんだ。そうか、そうなんだー。」
「ちょ・・・ちが・・・違うわよ・・・別に・・・。」
まるで女子中学生のようなメグミが可愛かった。
でも私のお気に入りは、残念ながらジュンスくんではなかったのだ。
向こうのテーブルで、汗だくのチャンソンがシャンパンを配っている。
テーブルには小太りしている中年のおばさんがいた。
チャンソンの左手を握りしめながら、ケタケタ笑っていた。
それでもチャンソンは嫌な顔せず、礼儀をわきまえながら上手に彼女らをさばいていた。
「チャンソンはやっぱり年下だから、みんなに可愛がられるのよね。」
胸の中がちくりと痛んだ。
六人がステージに戻る頃にはポールは収納されていて次のステージの準備がされていた。
そして、いきなり照明が落ち、次の瞬間にはストリングスの音楽が流れていた。
「え?これは・・・?」
スポットライトの中、鎖で繋がれたテギョンくんが現れ、苦しそうに身悶えしている。
汗で濡れた身体が眩しくて、つい視線を逸らしてしまった。
すぐにまた照明が消え、次に浮かんだのは脱出用のガラス箱の中に同じく上半身裸のまま捉えられているチャンソンの姿だった。
見世物小屋のような雰囲気の中、ガラス箱の中に煙が充満し苦痛に満ちた表情で喘ぐ。
悶え苦しみながらガラス箱の天井を破り、起き上がるチャンソンのその身体が野獣のように美しい・・・
それはまるで暗闇の中で獲物を狙うネコ科の動物のようだった。
(どうしよう・・・私の身体・・・もうMAXでキテる・・・)
こんなステージは初めてだった。
その後拘束衣に目隠しのウヨンと続き、演出の妖しさは増すばかりだ。
そして中盤からのタイトなスーツ姿とのコントラスト。身体と頭の奥がギリギリと捻じれていく感覚がする。
そしてずっと保ち続けていた私の中のバランスが狂っていく音が聞こえる・・・
Listen to my heart beat
私の心臓はもう破裂しそうなほど激しく脈打っている。
どうしたらいいの?
こんな感覚・・・今までに経験したことがないほど身体が反応してる・・・
めくるめくステージ演出の展開に私の脳は完全にオーバーロードしていた。
最後にステージ上でメンバー全員が倒れた時には、私の身体も倒れそうになっていた。
曲が終わり、照明が落ちる。
客席は興奮で湧き上がり、スタンディングオベーションが始まった。
(あぁ・・・私も立ち上がらなきゃ・・・)
椅子を後ろに引き、立ち上がろうとした瞬間、視界が斜めに歪んだ。
(?)
おかしいと思った時には、私の視界には闇しか映っていなかった。
そう、私は気絶してしまったのだ。
突然やって来た「野獣襲来」に身体がついて行かず、身体の方がシャットダウンしてしまったのだ。
遠のく意識の端っこで誰かが腕を掴んでくれたのを感じたが、その手の感触しか記憶に残らなかった。
そしてその記憶が復元されるのは、もう少しだけ後の出来事だった。