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□■テギョン短編妄想■ 「すすき」
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cr. kyonco
「ここ?私に見せたいところって。」
若干冷え込んできた空気が肌を撫でる。
見事なまでに赤く焼け落ちそうな夕日が、紫に染まりつつある空と黒い山々をオレンジ色に染めていた。
「はい。この時間帯が一番綺麗だってスタッフさんに教えてもらいました。すすきが秋らしくていいって。」
男は、両腕を前に組みながら寒そうにしている女の肩にレザージャケットをかけ、後ろから抱いた。
まだ慣れない日本語は、こういう時に歯がゆく感じられる。
かける言葉のニュアンスを考えているうちに、躊躇してしまうのだ。
「今日の夜、日本を立つんでしょう?」
「・・・・・」
男は何も言わず、女のうなじに唇を寄せた。
「あ・・・ん・・・私、もう行かなきゃ。家族が帰りを心配してる・・・」
「水曜日は8時まで大丈夫・・・なんですよね?この前もそう言ってた。」
遠くでカラスの鳴き声がする。
きっと山へ帰っていくのだろう。
闇が訪れる前に、この高まりを沈めることはできるのだろうか?
それほど男は我を忘れていた。
後ろから力ずくで唇を重ねると同時にその手をすべらせ、指で女のスカートの上から小さな愛芽を探した。
ほんのりと女の体温を掌で感じながら、指の爪でその部分を刺激する。
女の背がびくっと反り上がり、それを押さえつけるように男は女の上半身を抱きしめた。
「あ・・・テギョン・・・嫌・・・私がここ好きなこと知ってて・・・」
女はもう立ってはいられないくらいに男の指を感じていた。
そして男はそんな女をいとおしく感じながら責めるのを止められないでいた。
このまま自分のものになればいいのに・・・この快感の渦の中に飲み込んで、自分の中に閉じ込めてしまえたら・・・
男はもう片方の手を女の胸元に滑り込ませた。
女の身体はもう熱くなっていて、冷えていた男の手のひらを温めた。
尖った胸の先をそっと摘んでみる。
女はあっという声をだし、腰を男の方に寄せた。
男は今度は女のスカートをめくり、後ろから下着を脱がせながら指を忍ばせた。
すでに溢れている女の泉は、身体をしならせる度に量を増し、男の手のひらまで濡らした。
「もうこんなに溢れてる・・・このまま帰ったらなんて言われるかな?」
こんな時だけ素直になれなかった。
男は精一杯の我儘をぶつけた。
「欲しいって言えば?」
女は身体の奥の疼きを抑えながらやっと答えた。
「い・・・言えないの・・・わかってるよね?言えるわけない・・・」
日が暮れるこの一瞬の空の色はどうしてこんなにも切ないのだろう?
沈んでゆく太陽に自分の身を重ねてしまう。
「ヌナ・・・でもほら・・・欲しがってる・・・身体が・・・」
男は指を二本合わせ、沈ませた。
女はその瞬間が好きだった。
自分の中に指が入ってくる感触。
自分を追い求め、追い詰める指だ。
「焦らさないで・・・」
どうしてこんなにも感じてしまうのか。
女は男の指を求めて身体を揺らしていた。
「ん・・・あああぁぁ・・・」
胸の突起と下の蕾を合わせて刺激されると女は堪らなくなるのだ。
自分の中の男の指が蠢く度に大胆な水音が聞こえた。
ここは誰もいない、ただのすすき野だった。
女が絞り出す淫らな喘ぎ声は、寂しげに首を垂れるすすきの間をくぐり抜け、山の彼方に消えていった。
秋の夕暮れは、二人の背徳行為をいとも簡単に飲み込んでしまう。
「お願い・・・もう許して・・・」
内股で両脚を震わせている女は男の唇に自分の唇を重ねようとしたが、男はそれを制し女の下着を下した。
「ヌナへの罰だよ・・・僕をここに置いていく罰・・・」
男は女の温かい身体の中に深く自分のものを突き挿した。
そして女が首を振りながら嫌々をするのを力ずくで抑えながら、何度も突いた。
荒々しい交わり。
一途な想い。
女は声を荒げながらも周りのすすきを見つめながら思った。
枯れてゆく。
何もかも。
今は迸る情熱を持て余しながら、それでも深く交わろうとしている。
しかし、どうだろう?
もうすぐやって来る冬に耐えられるのだろうか?
このままあの夕日のように黒い大地に抱かれたまま沈んでいきたい・・・
「テギョン、お願い・・・逝かせて・・・あなたをここに置いていく罰を受けるから・・・お願い、たくさん突いて・・・」
男は思う。
違う。
やはり自分が置いていくのだ、この女を。
そして自分は煌びやかで嘘にまみれたあの世界に帰っていく。
女はなにもかも承知で自分を受け入れてくれようとしているのだった。
若いだけで何も知らない自分を、独りよがりで嘆いている自分を。
ヌナ・・帰ったらダメだ・・・
喉につかえた想いを飲み込んで、男は女に感情の全てをぶつけた。
もう少し早く出会えていたらどうだったのだろう?
自分たちは幸せになれたのだろうか?
いくつもの別れを思い悩むことなく、ずっと身体を合わせていられたのだろうか?
ひとつになれる悦びの後には、必ず離れ離れになる運命なのだ。
どんなに激しく身体を重ねようとも。
男には仕事があり、女には帰るべき場所があった。
そう思えば思うほど、男は深く繋がりたい想いに溺れていく。息ができないほど深く・・・
「テギョン!もう・・・あぁっ!!!!」
女が叫び、全身を大きく仰け反らせた。
男は女の身体を後ろからきつく抱いて最後の頂きまで上り詰めた。
その瞳の先には、ただ焼け落ちた夕日の名残と深い闇があった。
結実と終息。
秋の終わりが冬の始まりにくちづけた瞬間だった。
そして空は、漆黒の闇に包まれた。
cr. kyonco