指先だけで、甘い熱を…

□これは一時の戯れ。
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『あっ…あぁんっ…』


部屋に色っぽい声が木霊する。


「っ…緋里!」


腰を振る男。

私の名を呼ぶ口。

体をいらやしく触る手。

私は…あなたに抱かれた。


『はっ…ぁ、旦…那ぁ!』

「っ…旦那じゃなくて、鯉伴って、呼べよ。…緋里」


懇願するあなたに、私は涙目になる。


(あぁ、こんなにも激しい)


突き動かされる体は、いやらしくしなり、口からは嬌声を上げた。


『り…はん…!りは…っあああ…!』

「緋里…っ!!」


私なんかが、あなたの名前を呼んでいいのかなんて思いながら、私はあなたに体を開く。


抱かれるのなんて、変わらないと思ってた。

誰に抱かれたって同じ。

だけど…あなたは違った。

まるで私を遊女と見ていない。

1人の愛しい女として扱ってくれる。

…夢を見せなければいけない仕事の私が、逆に夢を見せてもらっているようだ。


『ああっ…す、き…!り…はんっ…!』


口から出たのは本心で。

言うつもりなんて、なかった。


でも、あなたは優しく微笑んでくれて…、


「俺も…好きだぜ…」


何て言うから…私は、胸が苦しくなった。


『りは…も…、だめ…ぇ…!』

「はっ…一緒に…っく!」

『ぁぁあああっ…!!』



こんな感覚、味わった事がなかった。

締め付けられる、胸の痛み。




これは一時の戯れ。


(そう思ってたはずなのに…)







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