指先だけで、甘い熱を…

□意外な真実。
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私は乙女に無理やり連れられて、その本家とやらに行った。

大きな屋敷、そして門。

ギィ…と、そこを開けると現れたのは…

妖怪!妖怪!!妖怪!!!

まさに妖怪屋敷だった。

勢いよく乙女の方を振り向き、顔を見る。

私の考えているよくない勘が当たらなければいい…、そう思いながら恐る恐る問いただした。


『お…乙女…お前まさか…』

「はい!私は人間ではなく妖怪ですvV」


ニコッと笑ってそう言いのけた。


『っ…はぁー…』
(予想外だ…いや、勘は当たったのだから予想通りか?…とりあえず……)

「どうなさいました?」


頭に手を当てて深いため息を吐く私を、乙女は不思議そうな顔で覗き込んでくる。

誰の所為でこんなため息を吐いたと思ってるんだ、まったく。


『帰る』


一言そう言って踵を返した私に、乙女が再度袖を掴んで拒む。


「どうして帰ろうとなさるんですか!遠慮はいりませんっ!さあさ、こちらです♪」

『……』


有無を言わさず、ズルズル〜…っと連れて行かれる。

周りは私を奇異の目で見ており、自分が異質なのはどこに行っても変わらないのだと再確認した。


『…分かった。分かったから引きずるのは止めろ』

「あ、これは失礼しました。では、改めてご案内いたしますね(にこっ)」

『…ああ』
(まったく…どんだけ力もちなんだ…)


いつまでも引きずられているわけにもいかないため、私から折れたが…どうにも、この山吹乙女は私と相反する存在らしい。


(笑う事も…人と話す事も…私としている事は同じなのに、相手が違うだけでこうも…明るくなるものなのだな…)


下を向きながらそんな事を考えていると、どうやら目的の場所についたようだ。


「乙女です。恩人の方をお連れいたしました」

「おお、入れ」


男の声が聞こえ、襖が開かれるとそこはもう宴状態だった。

ドンチャン ドンチャン

楽しそうな声が聞こえる。


『な…なんだこれは…』


ポカンと口を開けてその様を見ていたが、上座に座っている男に呼ばれ、私は近づいた。


「ほぉ?お主が“吸血鬼様”か?」

『…だったらなんだ?』


ギロリと冷めた目線を送りつけると、男はククッと笑った。


『何が可笑しい?』

「いや…?少し昔の女を思い出してな…」

『……』
(雰囲気が周りの妖怪とは違う…まさかこいつが大将か…?)


男は妙な雰囲気と畏れを纏っているようだった。

周りとはどこか違う…一歩進んだ者のような存在だ。

ビリビリと、少しだが威圧的な物も感じる。


「くく…気を悪くしたならすまん。…乙女を助けてもらって悪いな」

『別に…大した事はしていない』
(逆に懐かれて迷惑してる所だ…)

「まぁ…そう謙遜するな。俺はぬらりひょん。どうだ?一献…」


盃を差し出され、大きな酒瓶を持ち上げてゆらりと揺らす。

私は少しばかり躊躇ったが、それを礼として受ける事にした。

トクトク…と澄み渡った良い香りが漂う。


『いい酒だ…』

「ほぉ…お主、分かる女じゃな」


ニヤリと笑ったぬらりひょんと言う男は、注ぎ終わった瓶を隣りへ置き、私と盃同士をぶつけそして呑みあった。

鼻に通る米の甘い香りと味わい。
後味も爽やかでとても飲みやすい日本酒だった。


『…うまい』


フッと笑みを浮かべそう言うとぬらりひょんも「そうだろう?」と笑った。

乙女は私の隣でニコニコと笑っていたが、ある人物が来て表情は変わった。


「鯉伴様!」


私はその言葉に驚き、振り返る。

するとそこには…手ぬぐいをした鯉伴が、悠々と立っていた。





意外な真実。


(女に連れられ行った妖怪屋敷で出会った男は私の会いたかった人)




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