廻る廻るメリーゴーラウンド

□廻る廻るメリーゴーラウンド
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私、篠宮燈子は生まれてこの方、満たされない気持ちを抱えて生きてきました。
いや、現状に不満がある訳では無い。家庭環境は至って普通。こんな私にも友達は人並みに居る。関係も良好だ。なのに私は満たされない。
「う、うぁ…」
枕元の目覚まし時計が鳴り、私の意識が覚醒する。
(また、同じ夢…)
最近厭に同じ夢をよく見る。誰かと話しているんだ。すごく楽しいのに誰と話してるのか分からない。名前が喉元まででかかっているのに出てこない、顔すら靄がかかったようにしか思い出せない。それなのに確かに知っている誰かだと解る不思議さ。
喩えるならそれはとても大切な何かを忘れているような、そんな居心地の悪さ。
鈍く痛む頭をゆるゆると振って布団から体を起こす、壁にかかっているカレンダーに目をやる。今日の日付に赤いマーカーで大きな丸がつけられている。
(あぁ、今日は高校の入学式だっけ…)
―…え?
慌てて時計に目をやる。時計の針は既に出発しなくちゃならない時間を指している。
「やっべえ!」
布団から飛び出してクローゼットにかかっている新しい制服に袖を通して、朝食もそこそこにして玄関に揃えてあるローファーをつっかけて家を飛び出す。
「行ってきます!」
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