*本編*【氷帝】
□-第2章-
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【文武両道!悔いのないよう毎日が充実している学園生活を送ろう!】
この、いかにもありきたりな言葉を羅列させただけの文章は、私の在籍する3-E組のスローガンである。
ご丁寧にスローガンを、クラス全員が見えるようにと黒板の真上の壁に、デカデカと飾られている。
充実した学園生活…ね
まさにこのスローガン通りのことを私はしていると思う。
文武両道だし。
友達も沢山いて、まさに生徒の憧れの存在だし。
これだけ聞けば、第三者はこれ以上充実のしようがないってぐらいの日々をさぞかし送っているのだろうと思うはずだ。
まあ、正直なところ私自身は、ただのなんの苦労もしてない金持ちのボンボン達が通っている氷帝学園なんて
大嫌いだけど。
でも氷帝学園は一見、周囲から見ると非常に品格があり、優秀なご子息、ご令嬢が通う学校っていうイメージだから
ほら、大和撫子とやらは、そのイメージにぴったりの学校に行った方がいいでしょう。
だから、私はこの氷帝学園を選んだのだ。
もちろん、私はお金持ちでもなんでもないから成績優秀な特待生として、学費の大半は免除してもらっているんだけど。
そう、よって何が言いたいかというと
私は、私の努力で勝ち得た今のこの確固たる学園内の位置、そして【平穏】を壊されることを何よりも恐れている。
……なんていっても、この氷帝学園で佐原 凛という人間を完璧に確立させたのだから、恐れることは何もないのだけど。
ほら、今だってとても短い休み時間なのに、私の姿を一目見ようとわざわざ階の違う下級生達がコソコソと教室を覗いているんだもの。
思わず、不敵な笑みがこぼれてしまう。
見かけ倒しで程度の低いこの学校の中で、一体誰が私の【平穏】を乱すことができようか。
もし、いるのならば是非ともお顔を拝見したいものだ。
この時の私は不覚にも知らなかった。
ただ1人……
たった1人だけいたことを。
そいつのお顔を拝見することになるのは、そう遠くない日。
…