*本編*【氷帝】

□-第3章-
3ページ/4ページ




会議室を出た私は、早歩きで跡部景悟を追いかけた。




「あの、跡部さんっ」




私はすぐに彼らに追い付き、背中越しに声をかけた。



跡部「…なんだ、副委員長。」



振り返った跡部景悟は少し面食らったような表情をしている。




それもそのはず、


極力彼を避けていたはずの私から声がかかったのだから。



「…………あの、ちょっとできれば2人がいいのだけれど…」




私は彼の横に立つ大柄の男の子に視線を送る。




私に視線を送られた大柄の男の子は、微かに眉を動かし跡部の方を見た。




跡部「ああ、樺地か。大丈夫だ、安心しろ。こいつは大丈夫だ。いないものとして、捉えてくれていい。


それでいいよな、樺地。」


樺地「ウス。」



樺地と呼ばれた大柄の男の子は、一歩後ろに下がる。



跡部「これでいいだろう、なんだ用を話しな、あーん?」




ふう。




私は軽く深呼吸をする。



心臓が尋常じゃないぐらい、跳ね上がっている。




私は意を決して、私を見下ろす彼を見上げた。




「……明日のことなのだけれど、い、家までは迎えに来て頂かなくていいわよ。
学園の前で待っているわ。」



お願い、何も反論するな。



黙って私の要求を受け入れろ。




跡部「…却下だ。」



「……え?」



思いがけない返答に、私は思わず聞き返した。




跡部景悟は煩わしそうに前髪を後ろにかきあげ、再び口を開いた。



跡部「だから、却下だといっている。

理由は1つ。学園で待ち合わせだとかえってスポンサー企業へは遠回りすることになるからだ。

お前の自宅からの方が、会社は近いし、効率がいい。」



あ。



そこで私は気づく。




私としたことが、不覚だった。




彼は車で迎えに来ると自ら申し出たのだ。



当然、私の家の住所は既知だったのだ。




それならば、




彼の口を封じなければ。




私は今まで口元にかろうじて浮かべていた微笑みを……



ずっと張り付けていた仮面を



完全に消した。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ