*本編*【氷帝】
□-第3章-
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私の雰囲気が一変したことに彼は気づいたのだろう。
かすかに身動ぎをしたのを私は見逃さなかった。
私は完全に仮面を取り払った表情で冷たく跡部を見上げた。
「………私の住所は知ってんでしょ。」
自分でもゾッとするような声色。
「あんたんとこの車が停車していたらどうなるか、想像しなくても分かるでしょ。」
そう吐き捨てると跡部の反応も待たずに、彼に背を向ける。
そして、顔だけ振り返り彼を一瞥した。
憎悪と嫉妬の入り交じった目で。
「明日、午前10時に学園の正門前で。
……ごきげんよう、跡部さん。」
最後はいつもの仮面を張り付け、口元に笑みを浮かべ、私は歩き出した。
―――――
しばらく佐原 凛の背中を呆然と見送っていた跡部は、
やがてクックックッと声をたてて笑った。
跡部「はははははっ!
……おもしろいじゃねぇか、佐原凛。」
跡部は先ほどの、佐原凛を思い浮かべる。
あれが、大和撫子やらの正体か。
普段の態度と180°違うじゃねえかよ。
それに、あいつの俺を見る目。
比較的平凡な境遇で人生を送っている奴らとは、決定的にアイツは異なるとみた。
跡部「……俄然、アイツに興味が沸いたぜ、なあ樺地よ。」
いや、正確には佐原凛自身じゃなく、あんな荒んだ目をしている理由にな。
樺地「ウス。」
佐原凛。
俺様の眼力-インサイト-
で、必ずや見抜いてみせるぜ!
…