*本編*【氷帝】

□-第3章-
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あれから1週間が経った。


氷帝学園生としての佐原 凛の歯車があの日から少しずつ、ほんの少しずつだが綻びを見せはじめていた。



もちろん、普段の学園生活にはなんの支障もきたしてはいない……つもりだ。



今まで通りに、微笑みを浮かべ大和撫子のごとく振る舞っている。



だが、文化祭運営委員の佐原 凛としては、別だ。




私はあの日以来、私の仮面を暴いた跡部景悟が怖くて怖くてたまらない。




この学園において絶対権力を持つ彼に私の本性を暴かれ、公表されてしまったら



いうなれば、佐原 凛の死を意味する。




だから、運営委員会で集まりがある時は、普段の私の体裁を保つことができないでいた。



会議でも極力彼を避けて座り、副委員長として接する時も必要最低限の会話しかしていない。



幸いなことに、跡部景悟もあの日のことを一言も口にしてこなかった。




まあ、彼にとっては私のことなどとるに足らないことなのだろう。




それならば、非常にありがたい。




彼と今の距離を保ちつつ、文化祭が終わるのを待つだけだ。




私は何気なく、いつものように高慢ちきな態度で、我々文化祭運営委員に説明する彼の顔をそっと盗み見た。




「――――――ッ」





最悪だ、



目があってしまった。



目があった瞬間に私の心臓が大きく波打った。




怖い。




跡部景悟は私の顔を見て、一瞬不敵に笑ったのだ。




人を見下したような目で。



跡部「おい、副委員長。」





そんな目で私を見るな!
ヤメロヤメロヤメロヤメロ!!!!




跡部「おいっ、聞いてんのか!佐原 凛ッッ!」




「は、はいっ……」



気がついたら跡部景悟が、私の座っている机の目の前で腕を組み仁王立ちしていた。




周りの各クラスの運営委員の視線を感じる。



皆、不審な目で私を見ていた。




私は今、どんな表情をしているのだろうか。




ツーーーと冷や汗が顔に伝った。





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