龍の半身
□失われた右目
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「…んっ」
朝餉のいいにおいがして目が覚めた。
「あ、俊太さんおはよう」
縁側にやってきた俊太さんに挨拶する。
『おはようございます。そういえばあの話、ひーさまのためにもいつ実行するのか言っておいてほしいものですね』
梵は疱瘡にかかってから、私に会いに来る以外、部屋から出なくなった。
会いに来る回数も日に日に少なくなっているのを感じる。
小十郎も父上もその家臣達も頭を悩ませていた。
そんなある日、小十郎が私に相談してきた。
<梵天丸様を大分手荒な真似をして立ち直らせようと思っています>
聴いた瞬間にあれだと思った。
絶対あれだろう。
『どんな手を使うのかは知りませんが、あれは相談というより、決定しているので用心して置いてくださいとでも言っているようでしたね…』
きっと相当な痛みだろう。
覚悟している。
『ひーさまも少なからず痛みを味わうのを忘れているのでしょうか?』
「私がいいって言ったの。梵と一緒に乗り越えたかったから」
小十郎も分かっているはずだ。
小十郎は全てを理解して実行しようとしているのだ。
「桜様」