龍の半身

□その後
1ページ/6ページ

「小十郎、お茶入ったよ」


「今行く」


鳶の鳴く声が静かな辺りに響く。


うん、今日も平和だ。


あれから、小十郎は私のことを呼び捨てするようになった。
まあ、行事とか戦の軍議や、戦のときは様付けだが、それ以外は敬語もなしに話してくれる。


敬語の件は私が小十郎にお願いした。
たまに敬語になるが、極力普通に話すように努力してくれたおかげで、夫婦らしく仲睦まじい会話になることができた。
夫が妻に敬語で話すなんて…ねぇ…。


「そういえば、また川中島行くんでしょ?」


「あぁ、武田と上杉の大将が完全に復活したからな」


「ということは、伊達も?」


「政宗様は乱入するつもりだ」


とか言いながら、実は真田とやりあいに行くのが目的なんだろうけど…。


「そう、じゃあまた村の人に畑任せないとね」


「もう頼んである。桜は出るのか?」


「うん、今更ね」


小十郎としては戦に出て欲しくないのだろう。
だが、私だって政宗を守りたいし、ここでじっと待っていると、政宗と小十郎のことが気になって眠れない。


「大丈夫、私はすぐ怪我が治るし、この右目もあるから滅多に怪我しないでしょ?」


「………」


そう言うと、小十郎は渋い顔をした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ