龍の半身
□その後
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「小十郎、お茶入ったよ」
「今行く」
鳶の鳴く声が静かな辺りに響く。
うん、今日も平和だ。
あれから、小十郎は私のことを呼び捨てするようになった。
まあ、行事とか戦の軍議や、戦のときは様付けだが、それ以外は敬語もなしに話してくれる。
敬語の件は私が小十郎にお願いした。
たまに敬語になるが、極力普通に話すように努力してくれたおかげで、夫婦らしく仲睦まじい会話になることができた。
夫が妻に敬語で話すなんて…ねぇ…。
「そういえば、また川中島行くんでしょ?」
「あぁ、武田と上杉の大将が完全に復活したからな」
「ということは、伊達も?」
「政宗様は乱入するつもりだ」
とか言いながら、実は真田とやりあいに行くのが目的なんだろうけど…。
「そう、じゃあまた村の人に畑任せないとね」
「もう頼んである。桜は出るのか?」
「うん、今更ね」
小十郎としては戦に出て欲しくないのだろう。
だが、私だって政宗を守りたいし、ここでじっと待っていると、政宗と小十郎のことが気になって眠れない。
「大丈夫、私はすぐ怪我が治るし、この右目もあるから滅多に怪我しないでしょ?」
「………」
そう言うと、小十郎は渋い顔をした。