エアギア 

□プロローグ
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どうして、俺だった?

―――きれい、だね。

どうして、この子だった?

―――ダレ?

どうして―――・・・きみだった?

―――はじめまして、かな?

初めて目が覚めたときから、この体だった。
羊水の代わりに使っていたのは、透明な液体。
母体の代わりに入っていたのは、ガラスの中。
体は不自由で、拘束布でぐるぐる巻き。

意識もしっかりしていて、ただ少ししゃべり難かっただけ。


―――シエン、キミの名前かな。


目の前の男の子が、ガラスに触れながら言う。

ただ、目の前のガラス越しの赤がとってもきれいで。
なぜか、目の前の優しげな笑顔がにじんで揺れた。


―――泣かないで?


ガラスをはさんで触れた手は、とても暖かかった。


あの時、キミは何ていった?
あの時、僕はなんて答えた?

あの時、俺は―――・・・ナゼ、ナイタ?


あの時俺は、どうしようもなくその優しい笑みににすがりたかった。

薄いガラス一枚が、どうしようもなくもどかしかった。


―――シエン、


きっと、それは今でもそうで。
いつだって、キミの前じゃ俺は弱い。


―――紫煙、大丈夫だ。


初めて見たのは、黒の中に浮かぶ鮮やかな赤。

初めて触れたのは、お前の体温が伝わったガラス。

どうしようもなく、愛しい温度。


―――オレノ・・・トモダチ・・・?

―――うん、そうだね・・・今は、ね。


ガラス越しにあわせた額。

―――俺が涙を流した、最初で最後の日。


――また明日ね、シエン。
――アァ、マタ・・・マタネ。


あの日に戻れたら、俺は何をするのだろか。
きっと、あの日と変わらない選択をしていたんだろう。


―――君のために。




                               つづく
 

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