エアギア 

□1.生徒
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ガシュッ・・・

「・・・」


暗い職員室の中。
一人の教師がいた。

黒いYシャツに、黒いスキニーパンツ。
目元には、色の薄いサングラス。その目は虚ろで電気の消えた天井を見ていた。


「・・・南イッキ・・・な・・・」


一生徒の名前を呟いて、加えていたタバコを口から離す。


「―――・・・シムカも、皆も・・・気付くかな・・・」


―――俺の、存在に。


ポツリと呟くと、タバコの火を消すとシュンッと音を立てて消えた。


月には、スタイリッシュな黒い影が浮かんでいた。











―――翌日



「クロサーセンセッ!おっはよー!」
「・・・はよ、中山、安達。」


黒澤 紫煙。
東中の教師にして、ATライダーである。
だが、紫煙は学校にライダーであるとは公表していない。


「センセってば、本当に笑わないねー
 ホンットクール!」

「・・・笑う必要がねぇからな。ほら、教室行け。」


二人を教室に向かわせると、紫煙は窓の冊子に体を預けた。
その視線の先には、「南樹」がいた。


「・・・お前は、どこまで飛べる?小せぇシャボン玉さん。」


ポツリと呟くと、体を起こして「数学準備室」に入った。

そして中にあったパイプ椅子に座る。


「・・・」


そろそろ・・・始まる。
夜王VSベビーフェイス戦・・・


「勝つのは・・・どっちだか。」



そうポツリと呟くと、後ろのドアが開けられた。


「あ、いたいた!先生!」
「!・・・美鞍。どうした?」
「夜さぁ・・・ちょーっと学校来れねぇ?
 イッキのことでちょっとやりてぇことがあって・・・」



紫煙は不良・・・つまり東中ガンズと仲が良かった。
もちろん、マキたちOBとも。
教師という立場を利用して、夜の学校の教室を貸すこともあった。



「別にいいが・・・俺は用があるからすぐ帰るぞ?」
「おっ!やりィッ!さっすが先生!」


可愛いな、美鞍は。


「じゃっまた放課後来っからよ!」



嬉しそうに笑いながら廊下を走っていく美鞍。
大丈夫かなー・・・や、大丈夫じゃねぇんだけど。



「・・・知ったこっちゃねーし・・・」



基本は、そう。

―――どうでも、いい。
確かに、美鞍は一番のお気に入りだし、不良どもの中ではかなりまともな常識人だ。
・・・だが。


わざわざ下調べもせずに危険に突っ込んでいくバカは大嫌いだ。


自分たちの力にも限界はある。
今のままじゃ、ツブされんぞ?


「―――アリのように、な。」


紫煙は大きく伸びてあくびをもらした。












―――夜


「・・・アナタから連絡が来るなんてね・・・
 もう死んでいるかと思ってたわよ?・・・紫煙。」


「・・・久しぶりに走りてぇんだよ、巻貝。」


トゥールトゥのファクトリーに現れたのは紫煙。
その足は、黒いATを履いていた。


「・・・。いいわ、こちらにきて。
 ・・・「彼」には連絡したの?皆心配してるわよ。」


「・・・知らねぇな・・・ダレのこと言ってんだ・・・」


紫煙は煙を吐き出す。
イネはあきれたようにため息をつき、紫煙に背中を向けて歩き出した。

紫煙はその背中についていく。











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