まこ様との生活

□6 優しい手
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―――夜


「麻也ー髪乾かしてー」
「はいはーい、ちょっと待ってね。」


夜ご飯を食べた後、手伝うって言ったのに「お風呂から」って言われてお風呂に入りました。

その間にもう片付けは終わっていて、もう皿洗いまで終わっていた。

うっちーは寝室のベッドに寝転びながら本を読んでいる。


「寝室で待っててね。」
「あーい。」


うっちーの隣に腰掛けるとうっちーは栞を挟んでから本を閉じた。


「みこちゃんは髪きれーだね。」
「ありがとー」


うっちーに髪を褒められた!!
君のほうが綺麗だよ!!


「みこちゃん可愛いし、髪綺麗だから将来モテモテだねー」


ドライヤー片手に麻也が言う。


「麻也髪伸ばせばいけめんになれるよ!!」


なんて言える訳がないので。


「そーかなぁ?永嗣さんもすきになってくれるかな!」


と小さい子特有の無茶を言っておいた。


「・・・どーだろうね。」


うっちーが苦笑いして、麻也も微妙な顔をした。


麻也は髪乾かすの上手だなぁ・・・
髪乾かすといえば、ザキオカさんも上手そうだよね。
子供いるし・・・


「・・・」


・・・っ!!
だめだ!!
どうしても家族のこと考えると、どうしても重くなる・・・
テンション低くなるし、暗くなる・・・!


「・・・ねーみこちゃん。」
「ん?なぁに、篤人くん。」


笑顔を作って言うと、篤人くんがとんでもない事を言った。


「みこちゃんのパパとママは、どんな人だった?」
「―――!!」



どうして、今のタイミングで聞くの?


「・・・おとーさん、は・・・」


ゆっくりと、記憶を辿った。


「サッカーが好きで、いちばん誠さんが好き。
 優しくて、手先がぶきようで・・・よく物を直そうとして壊してた・・・」


ドライヤーの音で消えてしまいそうな声で言う。
麻也も、うっちーも黙って聞いてくれてる。

聞こえていないかもしれないけど、私は話す。


「おかーさんは、料理じょうずで、あんまりしゃべらないけど・・・
 とっても優しいんだ・・・」


目の前のシーツがジワリと歪む。


「サッカーばかな、家族のために、いろんな国のごはんを、つくってくれて・・・」


ポトリ、と涙が出た。
いつの間にか、ドライヤーの音も止まっていた。


「おとーさんも、おかーさんも、わたしたちのことを、
 いちばんに、かんがえて、くれて・・・」


家に、帰りたいよ。
それなのに、相変わらず顔も出てこない。
日に日に薄れてゆく、両親の影。美香ちゃんも、裕も豊も。・・・わからなくなってゆく。

電話番号も、家への帰り道も。

ここは心地が良くて、大好きな人たちに囲まれて、夢みたいな日々を過ごせて。


「・・・」


ポロポロと流れる涙は、どんどんシーツを濡らしてゆく。


「・・・辛いこと、聞いた?」


わからなくなってゆく。
こうして、話していく間にも。

麻也が抱きしめてくれながら聞いてくる。
声を出したくなかったから、首を横にふった。


「長谷さんがね、みこちゃんに記憶がないって言って心配してたよ。
 すごく辛い思いしてるとおもうから、甘やかしてあげたいんだって・・・」

「・・・ッ」


長谷部さん、ごめんなさい。
私は、あなたに、隠し事をしています。


「みこちゃん、俺らね、みこちゃんの家族になってあげたい。」


うっちーの言葉に、胸が熱くなる。
苦しくて、息が上がった。


「甘えて、いいよ。家族になろうよ。」


私はそこで、糸が切れたように泣いた。




















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