その他ジャンル夢(羽哉)
□(仮)って何ですか
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あの日――
約束通り、帰り道に告白の返事をした私とサイは、とりあえずは…恋人同士になった。
何故とりあえずなのかと言うと…やっぱり、一日という短時間でこんなにも人を好きになれるものなのかと…疑問に、私が思ったからで……
付き合うからにはやっぱりちゃんとしておきたかったから、とりあえずは(仮)付きで告白を受け入れたのだ。
―――と言っても、相手はあのサイ。
今日あたりにでも、「ごめん○○、恋人と恋人(仮)の違いって何なのかな?(どの本にも載ってなくて…)」なんて聞いてくるだろうと身構えていたのだけれど…―――
「げっ、37.8℃!?」
朝。妙に身体が熱っぽくて怠いなと思い、恐る恐る熱を計ってみると、案の定風邪をひいていてげんなりする。
多分、もうすぐ春だといってもまだ長袖一枚では肌寒いこの季節に外で眠っていたからだろうな…なんて、昨日の事を思い出しながら思った。
あれ…でも、あの時サイは上半身裸だったよね。
……もしかして、サイも今頃、風邪で寝込んでたりして…
「私服以外は常時腹出しの人が、そんなわけないかっ」
ピッと体温計の電源を切り元あった引き出しの中に直すと、私はそそくさとベッドの中に戻った。
まあ…今日一日寝とけば、熱も下がるよね……―――――
木の葉の里に存在する、唯一の図書館――木の葉図書処。
連日多くの人が訪れるこの図書館の片隅には、1人、静かに本を読み漁るサイの姿があった。
「うーん…やっぱり、どれも曖昧だな」
そう言って、“恋人と友達の違い”というテーマについて書かれた本の数ページを読み終えるなりパタリと本を閉じたサイは、既に読み終えた数冊の本が重なるその上に本を置いた。
「(やっぱり、ここは直接聞くのが妥当かな…)」
本を読んだことでより一層そう感じたサイは、早々と本達を元の場所に直し始める。
そんな中で、ふと自分でも気づかない程に自然と舞い上がっていた心に気づき、彼は嬉しそうに苦笑した。
「(まさか、会えると思っただけでこんなにも嬉しいだなんて…)」
「―もう、僕も人のこと言えないな…」
ヒナタと付き合いだすなり、すっかり彼女の虜になっていたナルトのことを思い出しながらサイはぽつりと呟いた―――
「(さてと……ん?)」
木の葉図書処から出てきたサイは、咄嗟に自分の様子を伺う怪しい影に気づいた。
しかし向こうもそれに気づいたのか、次の瞬間にはスッと姿を消していた。
――しかしながら、そこは流石はサイ。
みすみす逃すようなことはせず、すぐに影の正体に追いついた彼はそいつの“ふさふさのしっぽ”を鷲掴みにして持ち上げた。
「はっ離せ!何するんだコン!!」
「なんだ、やっぱり君か…」
それは、○○が口寄せで出す忍狐のうちの一匹であった。
が、追いかけていたその僅かな時間の中で何となく見当がついていたサイはさほど驚くこともなく、宙ぶらりんになりながらも必死に暴れる彼と話を続けた。
「確か…六狐(ろこん)だっけ。○○に頼まれたのかい?」
「違う!六狐は俺の六番目の兄ちゃんだコン!!お前、顔色だけじゃなくて目も悪ぃんじゃねぇか!?」
「顔色が悪いのは元からだよ…。分かった、じゃあ君の名前は何ていうんだい?」
「あぁ!?なんで俺がお前なんかに名前をっ…!!」
「あ、そういえば最近木の葉に出来た油揚げと豆腐の専門店があるんだけど…」
「あっ油揚げ!?っ…や、八狐(やこん)だけど、みんなからは八(はち)って呼ばれてる」
「そっか。じゃあ八、改めて聞くけれど君はどうしてここに?」
「そっそれはぁ………」
「何でも、その店では頼めばいつでも出来立ての油揚げを用意してくれるらしいよ」
「何ぃ!?…っいや駄目だ!主の言いつけは絶対っ……ああでも出来立てぇ〜っっ」
もうひと押しだ、とサイは思った。
そこでサイは、ニッコリと微笑んで、未だ宙ぶらりんで悶々とする彼に言い放った。
「満腹になるまで、好きなだけ食べさせてあげるよ」
「はい!言います!!」