テニスの王子様【羽哉】

□優しい王子様
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それは雨の中、他愛もない話をしながら、2人並んで下校していた時のこと。


不意に1台の車が、100mくらい先の曲がり角から2人の通っていた道にと曲がってきた。



その車の速度は明らかに制限オーバーをしていた。

その事にいち早く気付いた跡部は、ふと自分と○○の隣を車が横切る直前に
大きく方向転換して、何も言わず、彼女を抱き締めた。



バシャァァッッ!!!



案の定、車は、2人の直ぐ側にあった大きな水溜りを、勢いを抑えることもなく通過して行き

大きく上がった水しぶきは、そのまま、○○を抱き締めていた跡部の背中に浴びせられた。



「あ、跡部さん…!!」



異変に気付いた○○は、咄嗟に、彼の名を叫ぶ。


けれど、跡部は構わず、いつもの調子で応答した。



「バーカ…なんて顔してやがる。」


「だ、だって…、」


「女性を泥水で水浸しにするわけにはいかねぇーだろぉが。」


「で…でもっ…!」


「アーン?気にするなっつってんだろぉが…。
大体、真の良い男っつーのはなぁ…、
例え泥水でびしょ濡れになろぉが、その魅力は決して衰えたりはしねぇんだよ。」


「っ……!」



言いながら、髪を大きく掻き上げる跡部。


その姿は、言葉に出来ないくらいカッコ良くて…色っぽくて…



ふと地面に落ちていた傘を拾い上げた跡部は、そのままそれを○○に差したかと思うと



「フン…いつまでも見惚れてんじゃねぇよ。」



そう言って、コツンと○○の頭を優しく小突いた。






























優しい王子様

(はっとした○○の瞳には)
(優しく微笑む彼の姿があった―――)
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