テニスの王子様【長編】
□第3話
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「お嬢さん」
ふと横から声が聞こえたので振り向けば、そこには、○○が配ったボトルとタオルを手に持つ忍足が居た。
「ぁ、すみません!わざわざ持って来て頂いて…」
慌てて謝り、受け取ったタオルとボトルをカゴの中に入れる○○。
「ああ、俺が勝手に持って来ただけやから、別に気にせんでええ…それより、お嬢さんに一言アドバイスしたるわ」
「え?」
アドバイ、ス…?
何だろうと思ったその刹那
不意に、にっこりと微笑む忍足の顔が、○○の耳元にまで降りて来た。
「自分は、今自分に出来ることをやればええんやで」
「…!」
かと思えば、○○にしか聞こえないような小さな声で、そんな事を囁いた。
はっとして忍足の顔を見つめ直す○○。
今、私に出来る事を…
そっか……うん、そうだよねっ。
「っ有難う御座います!忍足さん!!」
「どういたしまして」
そう、忍足が微笑んで返すと、○○は、
元気よく、自分の配ったタオルとボトルの回収に移り始めた。
何故か、微笑ましく自分の事を見つめる忍足の視線には気付きもせず――
「侑士…お前、何ニヤついてんだよ?」
見かねた向日が忍足に尋ねる。
「いやぁ…憧れとった恋の助言が遂に出来たさかい、つい…な」
「はぁ?」
首を傾げる向日。
そんな向日になど構いもせず、休憩を終えるまで二ヤつきっぱなしな忍足であった―――