その他ジャンル夢(羽哉)

□天候と鬼上司にはご注意を
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ああ、今日はなんて運が悪いのだろう――

灰色の空から絶え間なく降りしきる雨を見つめながら、○○は思った。


今朝、珍しく早起きをした○○は、久しく体験したことのなかった、ゆったりとした朝の時間の流れを楽しんでいた。窓から入る暖かい日差しは連日の仕事の疲れを癒してくれ、また、早起きするのもたまには良いものだなとまで○○に感じさせてくれた。
しかし、すぐに自分の朝の弱さを思い出した○○は、同時に、いつも遅刻ギリギリで出勤する自分に対して横暴で嫌な態度をとる上司の事を思い出し、一気に気分が落ち込むのだった。

そうだ、今日はあの人よりも早く出勤して、あの人を見返してやろう―

それは、そんな時にふと思いついたこと。
ともすれば、こんな機会は滅多にないと、○○はそそくさと支度を始め、今や自身のトレードマークにもなっている長めの鉢巻きを額(実際にはやや上の辺りで巻いて首の後ろで結んでいる)に巻いて外にと出た。



それが間違いだったと気づいたのは、家を出てから随分と過ぎてのことだった。
つい先ほどまではとても良い天気であったのにも関わらず、突然降り出した雨に、○○は咄嗟に近くの木の下にと逃げ込んだ。

「どうして邪魔するかなー…」

持っていた手ぬぐいで肩を拭きながら、恨めしげに空を見上げる。
ここから仕事場まではそう遠くはないので、ある程度の雨ならば走って行こうと思った○○であったが、生憎、雨はそんな○○の企みを阻むかのようにより一層と強く降り出していた。

「……あーあ」

一向に弱まる気配の無い雨を目の前に落胆しながらその場にしゃがみ込む。
その顔にはもう、先ほどまであった笑顔なんてものはどこにもなく、代わりにいつ止むかもしれないこの雨への不安な表情を浮かべていた。

「はぁ…」

いつもの時間に出ていれば、こんなことにはならなかったのに…。

そんな後悔ばかりが頭に浮かび、その度にため息をつく○○。
雨は、相変わらず強く降り続いていた。
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