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□意地悪なあなた
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外は冷たい風が吹く


嗚呼、まだ冬なんだなって思い知らされた


「あれ、千鶴ちゃん?」


後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた


それが沖田さんと気づくのに、そう時間はかからない


「おはようございます、沖田先輩」


この時間に彼を見るなんて、珍しいこともあるものだ


私はそう思うのだった


朝、彼は基本的に見ないのだ


遅刻の常習犯で、いつも風紀委員の二人に怒られてるのだから


「それにしても先輩、どうしたんですか?今日。」


すると沖田先輩は苦笑した


「今日は早起きしたからね。君こそどうしたの?」


多分・・・平助くんのことだろう


私はいつも彼と登校しているから。


確かに私たちが一緒じゃないのは先輩が早起きすると同じくらい稀だ


「今日、平助くん熱出しちゃってお休みですよ」


そう言うと、沖田先輩はニィと怪しく笑う


「なら、今日は千鶴ちゃんは僕のものだね」


そう言われ、私の体温は上がっていく


冗談と知りながらも、私は照れてしまう


「わ、私は私だけのものです」


そう言うと沖田先輩は千鶴ちゃんらしいや、と笑った


その笑顔が、わたしには眩しくて


目も眩みそうな笑み。


そんな彼を・・・私は好きなんだ


沖田先輩が好き


何にもとりつかれない、自由な人


そんな彼が・・・私は好き


そんな態度が表に出たのか


彼がいつのまにか、私を見ていた


おどろいて後ろに跳び跳ねると、沖田先輩はクスクスと笑う


「わ、笑わないでくださいよ・・・・」


すると沖田先輩はごめんごめんと言いながら私の頭を撫でた


「千鶴ちゃんは可愛いからね」


ニコリと笑う沖田先輩


その言葉だけで、私はもう真っ赤になってしまう


沖田先輩は何でこうも軽々と・・・・

誰にでもこういっているからかな


なんて、悲しい考えが頭をよぎる


思いふけると、沖田先輩が少し先を歩いた


────そして。


「可愛いのは千鶴ちゃんだけだし、千鶴ちゃん以外には可愛いなんて思わないよ」


そう言って、振り返った沖田先輩は微笑した


「なっ・・・・!?」


今日、確信した


沖田先輩は、意地悪だ・・・!


言ったら今さらだね、何て言われそうだから、もちろん言わない。


*end*



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