MainーNarutoー
□春の花
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「旦那みて!!」
「あ?」
顔を上げるとそこには桜が満開に咲いていた。
もうそんな季節か。
サソリにはその程度の出来事だった。
だがデイダラは、それ以上の感激があるようで人の目も気にせずはしゃいでいた。
「キレイだなぁ!うん!!」
すぐに散ってしまう桜に興味がないサソリは早く足を進めたかったが、珍しく子供の顔を見せるデイダラに仕方なく付き合った。
「桜は散る姿が一番キレイなんだ!」
「そうか?このままのほうが俺は良い」
サソリの言葉にデイダラは「旦那は分かってないなぁ」と口を尖らせた。
でもここから話を広げるとケンカになると知っているデイダラは何も言い返さず黙って桜を眺めた。
「おい!そろそろ行くぞ。」
「あ、うん」
デイダラは名残惜しむように桜を見つめてからサソリの後を追った。
「旦那…旦那は桜が嫌いなのかい?」
「別に。好きでも嫌いでもねぇ。」
「ふーん。オイラは好きだ!」
「あんだけはしゃいでたら誰でも分かる」
「そんなにハシャいでたか?うん」
デイダラは歩を進める度に小さくなる桜を振り返っていた。
やがてか完璧に見えなくなると溜め息を吐いた。
「あーぁ。見えなくなっちまった。」
余程好きなんだな、とサソリはデイダラを呆れた目で見た。
「桜なんかこの先にもあるだろ」
「桜なんかとは何だ!それに散った後だったどーすんだよ!」
「じゃあ散るまで木の下で待つつもりか?」
「うっ…」
デイダラは言葉に詰まり目線を下げた。
しょんぼりしたデイダラを見て次はサソリが溜め息を吐き、面倒くさそうにマントの裾から何かを取り出した。
「ったく。仕方ねーな…」
サソリが取り出したのは花がたくさん付いている桜の枝だった。
「えっ!コレどーしたんだ!?」
「お前が後々うるさいと思ってその辺のヤツ取っておいた。枝でも先の部分だから問題ないだろ」
デイダラは桜の枝を受け取るとじーっと見つめた。
「服の中に入れておいたから多少、花が散ってるが文句言うなよ」
サソリの裾からはハラハラと花びらが出てきた。
花びらを振り払うとサソリは次にヒルコを出した。
ここから先はヒルコの中に入って移動するらしい。
(あ…)
デイダラはヒルコに入ろうとするサソリを掴んだ。
「なんだ?」
「旦那!ありがとな!」
デイダラはそう言うとサソリに軽いキスをした。
「チッ…あんま調子に…」
「やっぱ桜はキレイだなぁ!うん!!」
デイダラは聞こえないふりをして先に歩き出した。
「これだからガキは…」
サソリはヒルコに入るとデイダラに続いた。
「この桜は散ってほしくないなぁ」
「はぁ?さっきと言ってること逆じゃねーか。」
「だってコレは旦那がくれたヤツだもん」
「…勝手にしろ」
(旦那は気付いてないけど…)
ヒルコの尾には桜の花びらが付いていた。
(ヒルコ出してまで取ってくれたんだ)
そして枝の中でも一番、花が付いているものを探したのであろう。
服の中で花が取れてしまってもまだ補う程に花が咲き誇っている。
デイダラは愛おしそうに花びらにキスをした。
「旦那!オイラ、桜も好きだけど旦那も大好きだ!」
「知ってる」
「来年も一緒に見ような!うん」
「あぁ」
来年も再来年も、ずっと一緒に。