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□願い事一つだけ
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もしも願いが一つだけ叶うなら貴方は何を願いますか?


そんなくだらない質問を投げ掛けてみた。
質問を受けた相手は鼻で笑う事はなかったが、驚いたのかいつもより瞳を丸くさせ此方を見ていた。

「だから、願いが叶うとしたら何をお願いしますか?燐くん」

「いきなりどうしたんだ?」

答えになっていない返事。
確かにらしくない問いに自分でも可笑しく思う。

自分は悪魔で欲望には忠実。
欲しいモノはなんでもお構いなしに手に入れてきた。
名誉騎士も今の学園長という地位も、今、目の前のソファーに寝転がっている奥村燐も。

燐は魔神の落胤であり、人間の子でもある。
最初に出会った頃は、面白い!と思い後見人になったが、なにかと問題を起こす燐には手を焼いた。

最近は大人しく、私の言うことは聞くようになってきた。
それは後見人ではなく燐と恋仲になったからもあるだろう。

そう、私は燐を武器としてではなく恋人として手に入れた。

「ただ聞いてみたいと思っただけです。」

「ふーん、自分はどうなんだ?」

「…大体手に入れてますからね。願いなんて思いつかないです」

「これだから金持ちは…」

贅沢者とブツブツ文句を言う燐。

私は燐を見つめながら思った。

この愛しい弟はサタンを倒すという野望がある。
願いとしてはそれを叶える事が一番だろう。

叶ったら、私はどうなる?

恋をすると弱くなるというのは人間だけじゃないらしい。

私を一番に考えて、燐の頭のなかを私で占めて欲しい。
浅はかな自分の考えに自嘲の笑みしか出来ない。

燐は暫く頭を捻って、口を開いた。

「叶えられる数を増やしてって願う。」

燐の発言にメフィストは驚き、呆れた。

「ルール違反ですよ。」

「だって願いなんか尽きねーし。サタン倒してはい終わり!も嫌だ」

真っ直ぐに此方を見る瞳は蒼く美しい。

「貴方は我が儘ですね」

燐を手招きすると向かい合わせにして膝に座らせた。
燐は恥ずかしいのか少し俯き加減だ。

「さっきからおかしいぞ。何かあったのか?」

心配そうに上目使いで言われれば、そんな事ないと答えるしかない。
それに何かあったという訳ではない。
本当に、ただ聞いてみたかっただけ。

貴方の願いに少なからず私が入っていれば、この不安も少しは解消されるだろうに。

「貴方の願い、聞いてもいいですか?」

「サタンを倒す。」

迷わず答える燐。
予想はしてたが少し寂しい。
顔には出さず黙って燐を見つめた。
すると燐はまた恥ずかしいのか俯いてしまい顔が見えない。
だが、燐が囁いた言葉は聞き逃さなかった。

「あとは、お前と…メフィストとずっと居れれば…って…」

小さい、消え入りそうな声だったがメフィストにははっきり聞こえていた。
でももう一度聞きたくて、聞こえない振りをした。

「何ですか?聞こえませんでした。」

意地の悪い笑みをしながら燐の顔を上げる。

「…っ!だからっ…!」

真っ赤になりながらも必死に伝えようとする姿は本当に可愛らしい。

「俺はお前とずっと一緒にいたい…それが俺の願いだ!」

メフィストは満足気に微笑んで燐を抱き締め、耳元で囁いた。

「その願い、必ず叶いますよ。」

私の願いは貴方と一生を共にする事、
ですから。
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