Main-Aoek-

□新しい明日
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暗闇に浮かぶ星。
各々が光り輝き夜空を彩る。

その空を見上げる俺は今、どんな顔をしてるんだろう?


燐は晴れた日に決まって旧男子寮の屋上へ来ていた。
星を眺めたいとかそんなロマンチックな事ではなく、雨が降っていなければ空が曇っていても屋上へ足を運んだ。

またアイツに会いたかったから。

2ヶ月くらい前に特訓でクロと屋上に居たら突然現れた。
白いマントを翻し、怪しい笑みを浮かべ空から降り立ったソイツはよく見知った奴だった。

燐を学園に招き入れてくれた理事長、メフィスト。

暇を持て余し、散歩途中に燐を見付けたと言っていた。

何を話したかは覚えていないけど、燐を見詰める瞳は何故か優しかった事を今でもハッキリと思い出せる。

メフィストは『また会いましょう』と言い残し暗闇に消えた。

またっていつだ?

燐はそれ以来ほぼ毎日のように夜の屋上へ通った。

別に昼間でも会える。
だが燐は、目で追いかけるだけで話をする事はなかった。

あの時と同じ2人だけで会いたい。

「オレって女々しいんだな…」

燐は溜め息を吐きながら呟いた。

実際にメフィストと会えたのはあの時の1度だけでしかなかった。

「偶然はそう何度も続かなねーよな…」

何度目かも分からない溜め息をもう一度吐くと、燐は重い腰を上げた。

「寝るか!」

背を伸ばすと屋上の扉へ向かった。

「おや、もうお休みですか?」

ドアノブに手を掛けた所で知っている声に全身が固まった。
ドキドキしながら声のした方を振り向いた。

「今晩和、奥村燐くん」

「な…何しに来たんだよ」

待ち焦がれたメフィストが其処に居た。

「何って散歩です」

「あっそ」

「なんだか素っ気ないですね。私何かしましたか?」

「いや」

「なら良いんですが」

待ちに待った人物を前に緊張する燐。
メフィストはそんな燐の様子を気にする事なく紅茶を取り出した。

(ヤバい!すげードキドキする…やっぱり好きなんだ…)

風に揺れるマント。
可笑しな格好をしているのに紅茶を飲む姿は優雅で見惚れてしまう。
目の下には隈ができているのに、ソレすらも愛らしく思えてしまう。

これを恋と呼ばずに何て呼ぶ?
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