短い話

□Kyo(side.Sai)
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 いつもの様に窓から彼の部屋に入るとチリンとベルが鳴った。彼が僕のために付けてくれたベル。

 決まった時間に玄関からではなく、窓から入る。
まるで、お忍びで恋人の部屋にやって来るみたいに。
けれど、実際はそんな甘い関係ではない。
秘密を共有した、謂わば共犯者だ。

恋人を裏切った男とその共犯者。



 サスケの奪還に失敗し、里に戻ったその日。
男はナルトの家を訪れた。
何の約束もなく、突然に。
不用心にも鍵の開いた窓から忍び込んだ部屋には、疲れきった身体をぐったりとベッドに投げ出し、横たわる金色の少年。
目元には涙の跡が。

最愛の恋人に裏切られ、それでも一途に想い続けるナルト。
隣にいてほしい相手は無情にも、彼に刀を向けた。
その時、彼の碧い瞳は悲しみの色を湛えていた。

自分には、向けられたことのない蒼い瞳。
それがサスケに向けられたことが腹立たしかった。
自分を捨てた男を今だに恋し続けるナルトが。
そして、そんな彼を見下ろすサスケが。


 感情が高ぶった自分を抑えられず、ナルトの部屋を訪れた。
そして、涙の跡を残す彼を自分のモノにしたいと思った。

だから、無理矢理犯した。

寝惚けていたナルトの抵抗など可愛いもので押さえ込んでしまえば、簡単だった。

ナルトは泣きながら何度もサスケの名前を呼ぶ。
それが悔しくて、ここにいないサスケに嫉妬した。
ナルトを縛り続けるサスケに。

ナルトの太股を赤い血液が流れるのを見て嬉しくなった。
赤い血を流しながら、別の男の名前を呼びながら、それでも感じて甘い声で鳴くナルトにひどく欲情した。


それから、いまの関係がある。
身体だけの関係。
それでも、身体だけでも自分のモノになっていることが嬉しい。


 狂い始めた時計は、それでも確実に時を進めている。

ナルトの全てが自分のモノになるのが先か。
サスケが帰ってくるのが先か。

出来ることなら、ナルトを自分のモノにして、サスケが崩れ逝くのが見たい。
手放したことを後悔して、狂ってゆく彼を……。


 願わくば、腕の中の金色の天使が恋人の元に還らぬことを…



end?

 

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