お題
□触れられないもどかしさ
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「ガイ!どうして私の近くに来ないんですの!?」
「いえ…ナタリア様。前も言ったとおり、女性は苦手なのもので…」
「分かってますけれど…こちらに来て見た方がよく見えますわよ?」
「いや…うん。分かってるんですけど…」
たとえ幼馴染みであっても身体は震える。
近くにいけばよく見えるというのも分かってるけれど、どうしても行く気にはなれなかった。
だから少し距離を置いて見ていた。
ルークが保護した小鳥を…
「そういえば、こんなこともあったんだよなぁ…」
庭で怪我していたらしい小鳥をルーク…今のアッシュが保護して、それを三人で育ててた。
といっても、ナタリアは城から出ることをほとんど許されていなかったので時々しか見にこれなかったが…
ナタリア様は、お忍びで叔父の家に来た時もあったな。
すぐにバレて城に連れ戻されてたけど…
―ピッピ
「小鳥が元気に鳴きましたわ!もう大丈夫なんですわね♪」
「ナタリア様、手に乗せてみたらいかがですか?」
「えぇ!」
ゆっくりとその小鳥を落とさず、怪我をさせないようにナタリアは手のひらに小鳥を乗せた。
餌を与えたりしていたせいか、小鳥は三人に懐き手にとっても決して暴れたり逃げたりせずに、静かに手に収まっていた。
「可愛いですわ!」
「ナタリアに一番懐いてるみたいだな」
「ルークも乗せてみますか?」
「いや俺はいい」
「それでしたらガイ!貴方は?」
ナタリアの問に、えっ…という反応を俺は反応をした。
断りたかったが、どうぞ、と言いたげな笑顔をしているため断ることが出来ず…
「でもナタリア様…俺は……」
「ほら。とても可愛いですわよ?」
「えぇ…そうです……ね」
恐る恐る手を伸ばして、小鳥を彼女から手渡しされる。
触らないようにと慎重にしていたが、小鳥を乗せる時微かに触れてしまい身体が震えた。
そしてあやうく小鳥を落としそうになったのを、ルーク(アッシュ)が支えた。
「ガイ!もう…ちゃんとしてくださいな!」
「いやだから俺は…」
「でも…可愛らしいでしょう?」
その時のナタリアの微笑みが小鳥よりも愛らしく、見惚れた。
残念ながら女性恐怖症は消えなかったが、その代わりに自分の中で何かが湧き出した出来事だった。
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