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□ss
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唐突に始まるファンタジー。
導入って何?
起承転結っておいしいの?状態。
世界観がはっきりしないまま突然展開します。


多分戦闘の幕間から。











「あー、はははっ・・・・・・これ、ちょっと厳しいよねぇ」

「阿呆め、厳しいどころか最悪だ」


ギルバートは掠れた笑いの後に一言呟いた。
確かに戦況は芳しくない。
むしろ訂正を入れたフェリューシオの言葉の方が状況としては正しいだろう。


眼下に見える敵は目測にしておよそ三千。
その半数以上が魔導士、もしくは体に咒式を刻み込んだ魔導兵。
使役する魔獣を加えればその戦力は更に増大する。

片やこちらはギルバートとフェリューシオ、そしてフェリューシオの使役魔・對禍式(ついかしき)『逆撃ちの魔将校ゾルディフィオス』のみ。
これでも元いた七千の兵を拡散させ叩き潰してここまできたのだ。



「だ、ね。シオはあとどれくらいいける?」

「長歌詩の詠唱破棄は無理だ。短歌詩ならいけるが、今は高位の長歌詩一篇で叩いた方がいい」


多分もう持たないからな、と言葉を継いだフェリューシオの息は上がっている。

とりわけ高い魔力と命力を有する竜属の誉れ高き戦士ですらこの有り様だ。
もうこれ以上長引かせるのは無理だろう。


「・・・・・・シオ、魔将校でちょっとあちらさんの気、引いてくんない?」

「勝算は」

「あるよ。『彼女』を喚ぶ」


ギルバートの決断にフェリューシオはそれ以上何も言わず代わりに一歩前へ踏み出した。


「好きにしろ。その代わりくれぐれも『女王陛下』の機嫌を損ねるなよ」


ギルバートには一瞥もくれずにフェリューシオは片手をするりと肩口まで上げる。
それは指揮棒(タクト)を振るように。


「ゾルディフィオス、目標を『迎撃』」


その言葉に傍らからゆらゆらと陽炎のごとく無言で立ち上がるのは、血の気のない白さが際立つ長身の男。
摩りきれてぼろ布のような白いマントを靡かせ、常人よりも遥かに長い腕には身の丈以上の銃が二挺。
フェリューシオの呼び掛けに、生気のない底無し沼の瞳を前方に向ける。


「五分はどうにかしてやる」


そう言うや否やフェリューシオは土埃にまみれても尚美しい紺碧の髪を靡かせ、その背にゾルディフィオスを従えて駆け出した。




刹那に敵陣へ食い込む戦友を目に留め、ギルバートは息を吸い込む。

これから彼は詩を紡ぐ。
麗しき滅びの詩を。



「冥王の裁断を以て崩落する深淵より来る断罪者に告ぐ

エンシュミオンの王の盟約において冥底より続く穢土の身廊を開扉(かいひ)せよ

昏冥に沈む門番の三つ首の刎ね
喊声を伴い進軍せし千五百(ちいお)の王軍を滅し
冥き途に宛然たる紅き頂きを築きし累見の元帥に告ぐ

三括りの賢人、四方の騎士、十の殃禍(おうか)、二十四の血の洗礼を受けし致命者を屠りて現れしカルカヴィロディアの七つ眼の仮面を以て囚縛されし古の血に列なる者の戒めを開錠せよ

彼の者の従順たる僕の魂の一片を以て宣言する

暗渠の澱より這い上がれ
黒闇の皇帝が第一皇女コーデリア」




空気が、割れる。


血と硝煙、腐臭と断末魔、

死神の鎌が踊る灰色の戦場に

その切っ先すら飲み込もうとするかのように

ぐるりと曇天の空が捩れ、
そして漆黒の闇が孔を穿つ。

湿り、濁り、死の気配ばかりが跋扈する空間に開く虚無。

そこから前触れもなく白い手が伸びると、

灰色の戦場は一気に戦慄した。



白い手は生身ではなく、土埃舞う戦場には不釣り合いな重ね織の白い手袋。

しかしそれは幾年時を重ねたよりも醜い茶色の染みが浮かぶ。

続いて現れた白い手袋の先、細く伸びるのは赤黒く爛れた腕。

身を包む幾重にも重ね飾られたドレスは豪奢な意匠を持ちながら緑とも茶色とも言いがたい染みに塗れ薄汚れた綻びが足元を這う。

穿たれた孔より靡く髪は乾く煉瓦のごとく赤茶けに縮れて長く千々となって足に地に纏わりつく。

最後に虚無の裂け目から現れたのは皹割れくすんだ七つの眼が嵌め込まれた仮面の顔。
瞼のない眼は鈍い光を放ってせわしなく動き血とも膿ともつかぬ涙を流す。


異界の門を跨ぎ血塗られた戦場へ赴きたるは、腐肉と血のドレスを纏う一人の貴婦人。
その御御足を包む襤褸(らんる)の靴が滴り落ちる臭腐の液を踏みつけ糸を引いては進み出る。



對禍式上位召喚・昏黒の血族『不浄の皇女コーデリア』が黄泉から現れた。



苛烈なまでの腐臭と威圧感。
棘のように鋭く刺さるのは匂いや空気だけではない。

その御身が一つ身動きする度に魔障の気が痺れをもたらす。


冥府の女王を目前にしてギルバートは僅かに身震いしながらも跪いた。
恭しく手を取るとその甲に唇を寄せる。


「ご足労感謝致します、女王陛下」


頭を垂れるギルバートの頭上に異形の皹割れの仮面の合間から低く掠れた声音が響いた。


「久しいな、魔王の墓守烏よ。妾に何の用ぞ」

「早速ですが、今在る二足の羊を退かせて頂きたいのです」

「ほぅ。二足の羊、とな。
狩るならば犬か狼の領分であろう。妾の領分ではあるまいて」

「羊は羊でも知も術もある輩、それが数千と集まれば狂犬や餓狼でも踏み潰されましょう」

「ふふふっ、小賢しい彼奴(きゃつ)らよ。高が烏と蛇相手に咒式を仕込んだ子羊までおるとはな。余程必死と見える」


仮面の裏でくぐもる声は愉快に揺れる。

その間にもギルバートは腐臭と威圧感、そして何より召喚に要した尋常でない魔力の消耗に体が震えていた。


「必死なのは其方(そち)も同じか」


喉を鳴らして貴人は嗤う。
深窓の姫君の装いを汚し、媼のような嗄れた声を立て、然も愉しいと言わんばかりに女王は嗤う。


「良かろう。その望み叶えてやろう」


強張りの解けぬ召喚者の手を緩やかにほどいて女王は前へと踏み出した。

眼下にはうねる魔力が渦を成して流れを生む戦場。

しかしそれは弱き者共が群れを為すだけの舞台。


「まずはあの蛇の娘を下げや」


戦場の指揮者が代わる。
薄汚れた手袋の指揮棒(タクト)がゆるりと竜の戦士とその使役魔を指す。
それは憐れなる弱き者を屠る狂想曲(カプリチオ)を始める合図。


「この腐れ爛れた邪眼で狂い死には厭であろう?」



三度女王が嘲笑う。

冥界を統べる帝王の愛娘でありながらその首を欲し逆賊として不浄の身に堕とされたかつての美姫は、咎人の証である古の七つ眼の烙印に手をかける。

その烙印の仮面を剥ぎ取って顕になる眼は生ける者凡てを呪詛と怨念の渦中に引きずり込む。


今から始まるのは戦争ではない。


「愚者共よ、骨の一片血の一滴も残さず屠ってくれようぞ」


間もなくたった一人が振るう虐殺の宴が始まる。

惨劇の幕は切って落とされた。



【end】











中途半端で開演、中途半端で終演。

どう説明して良いのか分からなくなってしまったので書きたいところを詰め込みました。
お陰で修飾語がデコ盛り状態ww
読みにくくてすいませーん。
って読んでる人いるのかww

舞台は剣と魔法なファンタジー。
ギルバートとフェリューシオは人外でサイトを始める前に作ったキャラだったりします。多分悪魔かなぁ。
ちなみに烏→ギルバート、蛇→フェリューシオ。
シオは竜なのに皇女様からすれば蛇扱い。
二人ともちょっと特殊な術を使う設定だったのでそれを書いてみました。


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