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【今宵の虎徹はよく斬れる】
此の眼に映る切先は冴々と光り我を射る。
魅入るとはまさにこの刀の為にある行いかと錯覚する。
「この刀は人を斬らぬ刀に御座居ます」
「斬れぬ、では無くか」
「ええ。血を吸わぬ刀、とでも申しましょうか」
「刀は斬らねば只の鉄塊であろう。それとも其れは公家の飾り刀か?」
「いいえ。此れは人を斬る為のものでは御座居ません。強いて申すなら圀を斬る、帝の為のもの」
「圀を斬る、と申すと?」
「此の刀は言わば御印。有れば官軍、無ければ圀賊、其の途を別つもの」
「成程、御威光と言うわけか」
地肌は澄み渡る秋の空の如く
波紋は淡く柔らかな雪の如く
刀身は総てを拒むかの如く美しく光を反した。
「其れでも斬らねば圀とて護れぬ。矢張り只の飾り物よ」
「貴方にとって刀は人斬りの道具なのですね」
「無論。其れ無くして何が立つ?帝とて民の上には立てぬぞ」
「武(もののふ)の御魂では無いのですか?」
「其の様な繰り言、当の昔に捨てたわ」
「・・・其れでもこの刀が斬るのは人では御座居ません」
「喩えそうでも此れは何れ人を斬る、血を吸うぞ」
「世が変わればそういうものよ」
あの美しい波を描く刃先に血を添わせれば何と艶美なことであろうか。
帝が寄越したその節刀を此の手に携え、戦場(いくさば)を往くは鬼の如く
手に残るのは残響か、恨み言が
其の応えは返ってこぬだろう。
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某半国営放送で日本刀についての番組があったので影響を受けてしまいました。
あとは新撰組の総長のもがっつり。