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【愛で殺して】



「医者の言葉なんて信じないわ」


白い壁に反射する声。


「体の傷は癒えても
 心の傷は癒えないなんて嘘よ。
 体の傷だって癒えないわ」


アルトの歌声は調べではなく淡々と意志を吐く。


「心も体もボロボロよ。
 治った例しがない。
 だから信じないの」



「それが僕の言葉でも?」


「ええ。ドクターの貴方ならね」


ジャズでもシャンソンでもないけれど、せめて貴方に届くように言葉を紡ぐ。


「貴方の言葉なら聞くわ。
 だからはっきり言って頂戴。
 この際隠し事はナンセンスよ」





「──君は死ぬよ、
       もうすぐ」


この時私は極上の笑みね。
聖母マリアもクレオパトラも門前払いだわ。


貴方がそんな真摯な眼で私に言葉をくれたのは一体いつのことだったかしら?

愛してるって最初に言ってくれた時以来?

ねぇ、ドクター?




■□■□■□■□■

余裕のある女性が好きです。
男の不実も人生のスパイスだと笑える人が良いですね。

こんな短い場面だけごろごろ出てきます。



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