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□parody
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365度目の夜が幕を引き、
108つの煩悩を俗世の鐘の音が打ち鳴らす。
今年も想いが暮れ泥む。



「たーまやー!」


年が変わる直前のどこか浮かれて静かな夜に、鳴り始めた除夜の鐘を背にして今年の憂さを晴らすように大きく叫ぶ。


「おい、そりゃ花火だろ」

「いいじゃないの、大晦日なんだし」

「何それ」


的外れな咆哮にすぐさまつっこむ彼女と共に過ごす年の瀬。
笑いながら同じ時間を過ごせることに誰にでもなく感謝する。


「今年も一年平和に過ごせて感謝だね」

「年寄り臭いな」

「えー俺、超元気でしょ。昨日だってあんなに激しく夜をすご」

「黙れ変態。お前は暮れまで煩悩塗れだな」

「ひどっ!紅のいけず〜」


悪態を吐く彼女に勢い良く抱きついたら見事にパンチを食らった。
寸分違わず鳩尾に決めてくれる彼女は称賛に値する。


「べ、紅痛い」

「自業自得だ」


手荒いけどちょっと心配そうに目配せしてくれる君は可愛いと思う。
流石俺の彼女、と自画自賛。


「精々この平穏を味わっておけよ。来年は別れてるかも知れないからな」


照れ隠しとはいえなかなか笑えない冗談を言ってくれる。
年末でも冴えてる君が愛しいです。


「でも紅が別れてって言っても俺別れてやんないからね。覚悟してろよ」


いつまで経っても変わらない自信を口にする。
その先は分からなくても現在進行形で進むこの気持ちを言葉にして。


「・・・・・・そんなこと分かんねぇだろ」


でも君は信じてくれない時がある。
いつも真っすぐ前を向いて迷わず進む強い君なのに、人の好意には消極的。
これだけ真面目で素敵で美人なのに自信が持てないのが不思議。


「まぁ移ろいやすいのは人の常だしねぇ」

「だろ?」


だけどね、これだけは言えるよ。


「でもね、今は一番紅が好き。
この先どうなるか分かんないけど、今この瞬間は俺は君のものだよ」


そう言ってぎゅっと抱き締めた。
今度は抵抗もなく受け入れられる。
いつもいつも頑張ってる君の肩はこんなにも細いんだって改めて気付く。


「よくそういう恥ずかしいこと言えるな」

「だって紅だからね」


除夜の鐘が鳴り響く。
新しい時を告げる為に
あらゆるものを削ぎながら
響き、波立ち、音を継ぐ。


「来年も一秒ごとに俺を愛して。そしたらきっとずっと一緒にいられるから」


考えとく、
そう彼女が呟いて除夜の鐘の最後の一つが打ち鳴らされた。




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現パロ第二弾。
大晦日になんかやらかした。
この頃甘さが欲しかったのか二人が少女漫画です。


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