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□parody
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【 ROCK ONE'S WORLD 】



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── Biancaneve、
   通称“ビアンカ”

おそらく知らない者などいない。
街行く若者に100人聞いたら100人が知っていると答えるだろう。

それは今最も注目される二人組のシンガーの名前である。

5年前にメジャーデビュー、クールなハスキーボイスの“KOH”と、ユニセックスなハイトーンボイスの“ENN”のツインボーカルで構成される楽曲は新人とは思えないほどのハイクォリティさを誇り、出せば常にメガヒットを記録。
ポップなハイテンポナンバーから高い歌唱力を惜しみなく発揮するバラード、センセーショナルなロックに果ては古典音楽まで、彼らの音楽の領域は未だ広がり続け、それとともに幅広いファン層を獲得している。

加えて長身でタカラジェンヌのようなモデル体型の銀髪のKOHと、華奢でビスクドールのような可憐さに中性的な容姿の黒髪のENN、ビジュアル的にも申し分ない二人は今やミュージックシーンだけでなくファッションシーンにも影響を及ぼしていた。

本名はおろか年齢、性別、出身地、一切プライベートを明かさす、ライブと限られた音楽番組にしか姿を現わさないが、その存在はカリスマと言っても過言ではない。



「おれと紅(べに)さんのお陰で小汚い化けもんみたいなガングロは減りましたねぇ」

「は?んなもんまだいんのか?」

「いるとこにはいるんですよ。コンクリートジャングルですから。
でも代わりに白髪の輩が増えましたね」

「白髪じゃねぇよ、己は銀髪だ馬鹿野郎。それと紅って呼ぶな」

「別にいいじゃないですか。ここ、関係者しかいないでしょ」


某ホテル、最上階の一室で繰り広げられる会話。
一人では使いきれない所謂スイートルームという場所で、同じような黒いTシャツにパンツというラフな格好の人間二人が無駄に大きなソファに並んで座っていた。
そのソファに座っているのは二人だが、部屋には数人の人間が似たような黒い服で好きなように動いている。

ここはライブを終えたビアンカの二人と限られたスタッフが滞在している部屋だ。

「いいから呼ぶな」

不機嫌そうに形の良い眉を盛大に潜めてKOH─夕美紅は手近にあったペットボトルのミネラルウォーターを呷った。

「はいはい」

紅の機嫌の悪さなどまったく気にする事無くENN─生田園衞はやる気のない返事を返す。

いつものことなのか、周りは苦笑するか気にしないかのどちらかだった。


国民的ボーカルユニット【 Biancaneve 】
高い歌唱力、ビジュアル性、神秘性を有するKOHとENN。
雑誌やテレビのインタビューすら限られる二人は一見その容姿も手伝ってクールに見えるが、実はすこぶる口が悪い。
KOHこと紅は女性なのだがあの物言い、ENNこと園衞は男性ながら口調こそ丁寧だが内容が辛辣で二人とも下手に喋らせられない。

実はこれが二人を表に出せない原因だったりする。


「相変わらずっすね」

お疲れさまです、と言いながらバックバンドのギタリスト・木津宮が二人の前のソファの背に腰掛けに苦笑する。

「こちらとしては謹んで頂きたいのですか」

唯一かっちりとしたスーツを着込むチーフマネージャーの椿が木津宮がもたれかかるソファに座りノンフレームの眼鏡を押し上げた。

「お疲れのところ申し訳ないのですが次の仕事の説明をしますよ、夕美君、生田君」

まだ戯れ合う紅と園衞に椿が手帳を手に言い放つ。
例え過密なスケジュールであっても椿は容赦なく仕事を詰め込む。
それは椿が良いと判断した仕事であり、彼がそう下した仕事は確実にキャリアに繋がるものなので、どんなに過酷な仕事の後だろうが椿が持ってきたものであれば二人は黙って仕事を請ける。
今回も全国ツアーのようやく折り返しだがおそらく請けることになるだろう。

「内容は?」

「月刊誌『JERICHO』のロングインタビューです」

椿の言葉に少しだが紅も園衞も瞠目した。

『JERICHO』と言えば今話題の総合月刊誌である。
5年前に創刊、ファッションは勿論、ビジネスやライフスタイルを提唱する内容で在り来たりといえば在り来たりだが、若手の女性編集長のセンスの良さと先見の目により部数は軒並み80万部以上を記録し、今や流行発信源の一つになっている。
ここで取り上げられたものはどんなものでも100万売れるという“エリコ・ミリオン”なるジンクスまで存在するのだから侮れない。

「『Cordial saluti!』の取材ですから、下手なこと言わないで下さいね」

「『Cordial saluti!』?!ちょっとそれって凄いじゃないですか!」

自分の仕事以外には特に口を出さない木津宮が思わず叫んだ。

「ってことは宗璃王がインタビューに来るってことですか?」

表情が常にフラットといってもいい園衞も興味を示しているのがありありと分かる。


『Cordial saluti!』は『JERICHO』でも特に人気のコーナーである。
俳優が毎回気になる事象や人物について取り上げ取材しレポートするものだが、その俳優というのが只者ではない。

宗璃王。

中国と日本のハーフで中国映画界で活躍した後日本に進出、アジア圏ではトップクラスの俳優だ。
ヨーロッパでも出演作品のクォリティと演技力の高さから人気は高く、ハリウッド進出も噂される。
だが一方で日本のトーク番組やバラエティー番組にも出演するなどかなりフランクな一面もあり、人気、実力ともにまさに旬の男だ。

その男を編集長が口説き落とし持たせたのが『Cordial saluti!』である。
最初は世間も人気俳優のお遊び程度コラムという捉え方だったが、意外にも多岐に渡り造詣の深い璃王の取材は綿密かつ独創的で予想以上の好評価を得た。
今ではこれを目当てに雑誌を購読する読者も多く、勿論エリコ・ミリオンの一角を担うのもこの『Cordial saluti!』だ。

「創刊5周年記念の増刊号に記載されるそうです」

「こっちも注目株ってところか」

更にアニバーサリーな事実を上乗せする椿に対して面倒臭そうに紅は呟いた。

紅はインタビューそのものが好きではない。
何が楽しくて下らない質問に一々答えるんだと突っぱねて以来この手の仕事は極力避けている。

「そう邪険にしないで下さい。
宗璃王さんが是非貴方と話をしたいと仰ってきたんですから」

「物好きだな」

眉間に皺を寄せたままの紅に、椿は一言付け加えた。

「社長にだけは迷惑かけたくないでしょう?」

痛いところを突かれて紅は渋々頷いた。




 ・・・・・・To be countine?





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やっちゃった芸能界パラレル。

超人気のボーカルユニットの紅やんと園衞ん。
口と素行の悪さで露出は極力控えさせられてます。
事務所の社長は頼さん、秘書は渦嶋さん。
暹ちゃんはりおさんの事務所の社長でりおさんと二人三脚共同経営してます。
りおさんを口説き落としたやり手女性編集長は咲夜姉さん。雑誌のお名前でお分りかと。
見習い編集者がつかっちゃんですかね。
魔矢、アンジュ、夕は紅やんと同じ事務所でタレントですね。
ユニット名とりおさんのコーナー名はイタリア語です。
ちょっと恥ずかしいので意味はあえて秘密。

えらい中途半端で夢見がちな設定だなぁ、おい。
何だよ“エリコ・ミリオン”って(汗)



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