底知れぬ悪意と

□裏切りの人…神兵・初日
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ふと顔を上げた。
側に誰かの気配を感じたのだ。
見てみれば、其処には怪我を負い、疲れはてている女性がいた。

はて、何処かで見た事がある気がするが……

微妙な既視感が気になって、途中で演奏をやめて問いかけてみる。



「……失礼、だけど、誰?」

「ああ、失礼しました。わたくしは斑 桔梗(マダラ キキョウ)と申します。あまりに綺麗な音が聞こえまして、思わず誘われてしまいました」

「……そか、僕は、セシル」

「セシル君……あの、また奏でていただけませんか?」



その願いに一回頷いて、再びアコーディオンを奏で始める。
そうして口を開きかけたが、その前に桔梗が歌い始めた。



 この世は全て夢幻
 苦しみに
  悲しむ事などあるものか
 この世は全て夢幻
 さぁさ、歌に合わせて
  舞い踊れ



「……綺麗、ですね」

「まぁ、人並みには。個人的には、舞いの方が好きなのですが……この足ではもう、ダメですね……」



怪我の中でも一番酷い事になっている右足を撫で、悲しそうに呟く桔梗。

だが、



「大丈夫」



今までの小さめの声ではなく、しっかりとした力強い声だった為だろう。
驚いたように彼女は此方を見つめてきた。

セシルはそれから目を一切そらさなかった。



「悲しみも、苦しみも、一時の事。何も、何も、心配ないよ」



そう、にこりと笑って。





 パンパンッ、





二回の銃声に目の前が真っ暗になった。



「残念だなぁ。その強い心を、もっと攻撃的にしないと」



ニナは、無表情でそう言った。










セシル、桔梗 脱落
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