特殊作品

□短編集
14ページ/61ページ

Cherry Blossoms





「先輩! お花見行きましょ、お花見!!」
「……はぁ!?」

突発的な事に慣れているつもりだったが、これは流石に突発過ぎるだろう。





「……って何だ。学校の一本桜で花見かよ」

慌てて損した、と呟くDTO。
そんなテンションの低い彼を見て、頬を膨らませすねるハジメ。

二人は今、校庭に一本寂しく咲いている桜の木の下で酒盛りをしている。
因みに夜である。

これがハジメの言う花見である。
騒ぐわけでもなく、楽しむわけでもなく。
ただ二人で酒を飲むだけ。
お互いにザルなので、酔い潰れる心配はない。

「別にいいじゃないっすか。それとも、煩いだけの酔っぱらい相手に酒盛りしたかったんすか?」
「お前も言うようになったな……」

まぁ、確かに酔っぱらい相手は嫌だが。
そう呟いて酒を一口飲む。


静かだった。
彼らの立てる音は、全て夜の暗闇に吸い込まれて消えていく。

「……でも二人っつーのも、やっぱ味気ないっすかね」
「…………」
「K先輩とか、サトウとかも呼べばよかったかも」
「…………」
「せんぱーい? 聞いてますー?」

寝てるのか?と思ったハジメが、ぐいとDTOの前髪をかき上げる。
瞬間、ハジメはひゅ、と息を飲んだ。


合わさる瞳。

DTOの目に宿る、剣呑な光。

外せない。

そらせない。


──捕まえた。
──捕まった。


二つの相反する言葉が、脳裏に響く。

「……お前は気を許した相手に対して、無防備すぎる」
「うわっぷ!」

DTOの手が、ハジメの頭をぐしゃりと撫でる。
呆けていたハジメは変な声を上げてしまった。
「何するんすか!!」と怒りながら確認した彼の瞳は、普通の状態に戻っていた。

「第一、無防備って何すか」
「ホントの事だろ。今だって簡単に捕まったし」
「そ……んなの、D先輩相手の時だけっすよ」
「どうだか」

その返事にハジメはむくれる。
しかし否定しきれないのも事実だった。

気を許した相手に弱い。
取り込んだと思った相手に弱い。
そんな自分を知っている。

「お前はちっちぇーしな。マウントポジションをとられたら終わりだ」
「ちっちゃいは余計です」
「押し倒される可能性は否定しないんだな」
「あんたが言ったんだろーが」
「お、桜が頭に積もってるぞ」
「わざとらしいっすよ」

はぁ、と溜め息をつき、そっぽを向く。
「馬鹿野郎……」とか「こんな事する為に花見しようなんて言ったんじゃない……」とか。
恨み言ばかりが口から出てくる。

そんなハジメを見かねたのか、DTOはぐいと彼を引き寄せ、


「じゃ、もっと建設的な事をするか」


見れば、またあの剣呑な光。

「この……エロ教師」
「何とでも言え」

だけど今は……この桜に免じて許してやる。

そんな負け台詞を心の中で叫んだ。










────

昔の作品を軽くいじった程度のものなので、色々と出来が悪くて申し訳ない。
展開が早いのも大目に見てください……(汗)

H22/3/4

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ