特殊作品

□短編集
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寝起きは恐ろしい……





朝の九時頃、もそりとベッドから起きあがるジャスティス。
その表情は、普段以上にほわほわとしていた。

彼はかなりの低血圧だ。
寝起きがかなり悪く、途轍もなく攻撃的になる。

その為、寝起きの彼に絡むのは絶対にしてはいけないと、これを知っている人達の間では暗黙の了解となっている。

……まぁ、運が悪い時は悪いのですがね。



 ドタン ガタン



「ちょっ……静かにしてよ! 今日はマサのオフなのに!!」
「だからじゃない! こういう時じゃないと、頼めないでしょうが!!」

ロミ夫とミルクの大声。
どうやらミルクが何か頼み事をしに押し掛けてきたらしい。

朝っぱらの寝起きに、かなり不快になる怒鳴り声。

自然とジャスティスの口元が笑みを形作る。
ただ、その瞳がかなり座っているの。



 バタンッ



「星野先輩ーっ! 依頼よ、依頼依頼依頼依頼ーっ!!」
「…………」

勢いよくミルクが入ってきて、その後青い顔をしたロミ夫が恐る恐る入ってくる。
この後に起こる悪夢を予感しているような表情に、ジャスティスの笑みは益々深くなる。

「ちょっと先輩! 聞いてるの!?」
「知るか」
「しっかりしなさ……って、え?」
「煩い」



 どす、



遠慮ない、腹部パンチ。
たまらずミルクは膝をつき、しかしジャスティスは目もくれずロミ夫の方に向く。

案の定、ロミ夫は真っ青になって、腰が若干引けている。

「まままままマサ、ごめん、ごめんなさい。今からまた遠慮なく寝てていいから」
「私が二度寝できないたちだと知ってるだろ。それでそんな事を抜かすのか?」

のしのしと存在感を持って歩み寄ってくる彼に、ロミ夫は再び震え上がる。


やばい、やばすぎる。
これは完全に切れている。

ジャスティスは殆ど怒る事はない。
しかし一旦切れると、鬱憤が溜まっているのか恐ろしいのだ。
行き過ぎと言っても過言ではない。

加えて今は寝起き。
理性的な説得に耳を貸してはくれないだろう。
それでも逃げる為に、ロミ夫は自慢の三枚舌を駆使する。


「や、知ってマス。でもこれからまたぼーっとしてても構わないから。ほら、今回オレがこれ(ミルク)に押し切られちゃったのが悪いんだし文句は後で聞くよ。マサ最近多忙だもんね。掃除とか色々やってるからちゃんと起きたら言って。ご飯用意するから」


当たり障りのない事をほぼ一息で言い切る。
とりあえずちゃんと目を覚ましてくれるまでそっとしておけばいい話なのだ。
今までだって、こんな風に言って何とかやり過ごせた。

が、しかし。
今回は本当に運が悪かった。


「言いたい事はそれだけか」



 にぃっっこり



部屋の温度が五度近く下がったかのような錯覚を、ロミ夫は感じたのだった。





──ちょっと、色黒ホスト。何よあの阿修羅な正義は。

──低血圧で寝起きがひっじょーに悪いの。こんな事になったの、あんたの所為だかんね。止めたのに。

──それは……ごめん。

──次から朝っぱらから来ないでね。どんな急ぎの話でも。










────

ジャスがどれだけ寝起きが酷いのか書いてみた。
結果、着地点を見失いました。
何だろうこれ。
不完全燃焼。
ついでに言うなら、寝起きのモデルは私自身です。(笑)
家族によると、私を無理矢理起こそうとすると、物を投げたりドスの利いた声を発したりするそうな。
……記憶ないんだけど。

H22/2/9

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