特殊作品
□短編集
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幸
僕はよく、河原にある木の下に行く。
其処でぼんやりてしたり、読書したりして暇を潰す。
そして気が付けば、ツクバさんが隣にいる。
申し合わせた事は一度もない。
だけど僕が河原にいる時は、決まってツクバさんが来る。
それに対して、自然な事だと思っている自分がいる。
おかしいな。
最初は誰にも会いたくなくて、此処に来ていたのに。
ツクバさんが来ても、会話と言える会話は殆んどない。
気付いた時にポツリポツリと話すだけで、後は殆んど無言。
苦痛だとは思わない。
むしろ心地好い。
僕は元々よく話す方じゃないから。
だからこの気持ちも伝わらないんだけど。
ねぇ、ツクバさん。
僕は貴方の事が好きです。
男が男を好きになるなんておかしいですよね。
でも、僕は何時か貴方に伝えたい。
それで避けられる様になるのは、悲しいけれど。
Que sera sera
きっと、何とかなる。
サトウさんはよく河原の木の下にいる。
其処でぼんやりと過ごしてたり、本を読んでいたりする。
邪魔しちゃいけないと分かっていたのに、気が付けばぼくも其処にいた。
サトウさんには何も聞いていない。
来てもいいかという事も、居てもいいかという事も。
だけど何と無く分かる。
側にいてもいい事も、木の下にいる日も。
そして隣に座って、だけど会話なんて殆んどない。
きっと、それが普通。
だって凄く心地好いから。
この想いを伝えられないのが、ちょっと寂しいけれど。
サトウさん、好きです。
男だとか、女だとか。
そんなの関係無しに、好きです。
どうか寄り添う事を許してくれませんか。
……なんて、言えれば楽なんだろうな。
ぼくはかなりのチキンだって自覚してる。
……けど、この想いだけは絶対に言いたい。
きっと大分時間がかかるだろうけど。
Que sera sera
なるようになるさ。