特殊作品

□短編集
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腐女子のドキドキバレンタイン大作戦!?





※名前の表記は「arc-en-ciel」参照です。










「野郎共! 準備はいいわね!?」

「「「「おー!!」」」」

「遊んでねぇでさっさと用件を言え! 用件!!」

「煩いわね。先輩は敬うべきよ春乃 始」










恋する女の子の女の子による女の子の為の日、バレンタインデー。
その一週間前。

ポプ学の調理室には、企業の策略無問題(モーマンタイ)、私達は腐女子の腐女子による腐女子の為の萌の祭典を行う!!

そんな心意気を持った女子が集っていた。

「……というわけで、二月十四日のバレンタインデー計画を発表する!!」

キャー、と女子の黄色い悲鳴。
それを手で静めるのは、この計画の中心にいる窓辺(マドベ) キリ。
一見クールな優等生なのだが、その実物凄い腐女子なのである。
クールに見えるのは、興味がないものにはとことん興味がないだけで、熱中できる話題になればとことん熱くなる。
そのギャップに(色々な意味で)倒れる者もしばしいる。

「内容は単純明快。チョコ……勿論義理だけど、を綺麗に着飾った私達がプレゼント。男装もありよ。その場合女の子にプレゼントね」
「はい、質問いいですかぁ?」

手を挙げたのは、二つ結びの可愛い系女子生徒。
彼女は妙にきらきらとした目で聞く。

「キリさんはぁ、どっちの格好をするんですかぁ?」
「勿論男装よ。イベントが終わったら、私の手作りチョコ振る舞うから、楽しみにしてて」

最初の悲鳴よりも、更に感極まった悲鳴。
中には恍惚とした表情で惚けている人もいる。
どうやら想像だけで昇天してしまったようだ。

……それを呆れた様子で見ている、今や伝説とまで言われている六人の不良。
一応名誉は挽回しているが、まともな反応を返してくれる人は未だ少ない。

キリはその数少なく、依然と同じように話しかけてくれる人だった。
……なのだが、如何せん、以前からまともでないのだから喜べない。

「……窓辺先輩。早く帰りたいのですが」
「帰る所、学生寮でしょ。あ、なんならそっちでもいいけど」
「バイトあるんですが〜……」
「今日はあんた達全員非番だという事は確認済みよ!!」

腐女子なめるな!!と指をさしてくるキリには、もう呆れるしかない。

その情熱を他の所に向けろ。
こっちを巻き込むな。

その思いは届かない。

「とりあえずあんた達は全員配る係ね〜。ふふ、腕がなるわね……時にそこのさーん人♪」



 ぞくぅッ!!



正義、始、悠紀の三人が、同時に肩を跳ねらせる。
その様子をしっかり見てしまった残りの三人も、嫌な予感しか感じられなかったのだった。










と、いうわけでバレンタインデー当日……

「いや〜〜〜〜ッ!! かわい〜〜〜〜ッ!!」
「妹に欲しい……」
「お、お姉様と呼ばせてくださいッ!!」
「…………」
「うう……」
「ははは……」

始は超不機嫌そうな、悠紀は恥ずかしそうな、正義は苦笑いをその顔に浮かべる。
女装姿のままで。

今の三人の姿は、正直な所ぱっと見で男だと分からないほどに着飾っていた。
ぶっちゃけ、女と遜色ない。

始はカジュアルでボーイッシュ──実際男だが──な感じで、だがしかし男臭さが普段よりも抑え気味。
悠紀は清楚な感じで、白いフリルスカートとボア付きコートがよく似合っている。
正義は三人の中で唯一ロングヘアーのカツラを装着しており、それがまた黒を基調としたブラウスとロングスカートを引き立てている。

似合う、三人とも似合いすぎる。
そんな趣味がなくとも、涎が出そうだ(色々な意味で)。

「……馬子にも衣装とはこの事だな」
「マサ〜! すっごく綺麗だよ〜! 着てるもので性別決まってる顔なだけあるよ〜! ケーもそう思うよね〜?」
「あ、ああ……まぁ……」

別の場所で着替えていた珪、修、良弘が出てきた。
彼らはそれぞれの反応を示し、それがまた周囲の腐女子達の萌を刺激する。
中には鼻血を出しながらも溢れんばかりの笑顔で、しかも親指を立てている変態もいたが、関わり合うのも疲れたのでスルーしておいた。

「おーやー、三人は格好良くなって、三人は随分と綺麗になったわねー」
「きゃああああぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁあ!!!! キリさぁぁぁぁぁぁん!!!!」

思わず耳を塞いでしまうほどの甲高い嬌声。
実際キリは見とれるほどの男装の麗人と化していたわけで。

「どうだい諸君、準備は万端かな?」
「当然です!!」
「では、ミッションを開始するわよ!!」

そう叫んだキリの目が、今までにないくらい輝いていた事は……余談である。










「バレンタインチョコをどうぞ〜」
「遠慮はなさらずに。イベントは楽しむものでしょう?」
「どぞ(←笑みがひきつっている)」
「ハジメ、もうちょい笑えよ」
「それ、お前にも言うぜ修。お、嬢ちゃん、チョコ受け取ってくれ」
「チョコをどうぞお嬢様。今日は恋人達の為の日、少しだけ勇気を持ってみてください」

最初は嫌々巻き込まれた六人だが、ちゃんと役目は果たす。
それぞれ一言言いながらチョコを捌いていく姿に、腐女子達は眼福の思いで……写真を撮る(勿論裏方担当の人達)。

「格好いい&綺麗!!」
「女の立つ瀬ない! ……けどやっぱ萌えの方が強い!」
「今日の写真、プロマイドにして身内だけで交換しようぜ☆」
「「「賛成!!」」」

どうしようもない腐女子達の会話は此処までにして、粗方チョコを配り追えた六人にキリが近付いていく。
それに気付いた六人だが、何故か受け子三人は動揺した表情を浮かべた。

「ほら、三人とも。折角チャンス出来たんだからとっとと渡す!」
「? どういう事だ?」
「や、あの……」

珪が問い、聞かれた悠紀は赤くなる。
残る二人も同じような反応だ。

益々不思議に思って始に近付こうとした修だったが、



 ごすっ



顔に軽く叩きつけられた『何か』により阻まれた。

「っ……てめ、ハジメ! 何しや、が……る……」
「チョコ! やる!」

真っ赤になりながら叫んだ始につられてか、修も徐々に顔を赤くなってくる。
その様子をにやにやしながら見ていた珪と良弘だったが、残る二人の行動でその顔も崩れた。

「ロミ、どうぞ」
「珪さん、もらってほしいです」

それぞれに差し出されるチョコ。
良弘は可哀想なくらいに真っ赤になり、珪も親しい人間でないと分からないが、滅多にないくらい赤くなっている。

「……ありがと」
「……おぅ」

これは何という目の保養だ。
不良六人だと分かってるのに、何で癒される気がするんだろう。

これは見ていた一般人の見解。

生BLktkr!!
新刊のネタはこれで決まりね!!

これは見ていた腐女子の見解。

ふふふ……やっぱりこいつら見てると飽きないわね。

これはにやにやと顔を崩しているキリの見解。
これが本来の目的だとよく考えなくても分かる、それぐらい崩れた表情だった。










────

これ作成するのに一年半ぐらいかかりました……
間に合ってよかったと思います。

一応『裏世界設定』に入りますが、それの更に一部女性の腐女子設定が入りますので、厳密には『裏世界設定』には少しずれています。
以前書いた相互作品の話には繋がっていますけどね(笑)。

H23/2/14

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