特殊作品

□短編集
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まるで憎悪のように





ちょっとした息苦しさを感じたジャスティスは、ふっと目を覚ます。
まだ日が完全に出ておらず、部屋は薄暗いが、自分を抱きしめている存在だけははっきりと認識できた。


「ロミ……」


小さく呼んでみる。
未だ眠りに落ちている彼からの返答はない。

それでも側にいてくれているのが奇跡で、嬉しくて。
再び彼の名前を呼んだ。


一度は終わった筈の関係だった。

学生時代、高校の卒業式。
行く道が違う自分達は、ただの友人に戻る事を約束した。

それがどういう因果か、ホストと芸能アーティストとして再び出会って。
自分の気持ちが再燃するのをはっきりと自覚していた。

それは彼も同じだったらしい。

その日の内に二度目の告白。
様々なしがらみがあると理解していても尚、その手を取る事に躊躇いなどなかった。


だけど時々、どうしようもなく不安になる。

いつ引き離されてもおかしくない関係。
分かっている、永遠などない事ぐらい。
特に自分は職業柄、発覚すれば類を見ない騒ぎとなるだろう。

それでも彼を手放せない。
この秘密の関係が、間違いでない事を夢見ている。


「マサ……どうしたの……?」
「すみません……起こしましたか?」
「オレが勝手に起きただけだから……」

する、とジャスティスの頬を滑る色黒の指。
そうされてまた自分が涙を流している事に気がついた。

彼と朝を迎える度、何故か無意識の内に泣いてしまう。

悲しいとは、少し違う。
ただ苦しいぐらいに渦巻く複雑な感情が、涙という形となって現れる。

ロミ夫はそれについて詳しい事を聞いてこない。
ただ「大丈夫だよ」と抱きしめてくれる。

それで安心する自分がいるけれど、その言葉は多分、彼自身にも向けられているのだろう。

何故なら彼も震えているから。
きっと同じ不安を抱いているのだろうから。


ああ、外の世界が煩わしい。
彼以外の全ての事を、捨ててしまいたいほどに。


夜明けなんて永遠にこなければいいのに────


呪詛にも似た強い願いが、ジャスティスの口から漏れた。










────

BGM/magnet
作詞・作曲/mimato(流星P)
歌/ミク&ルカ

折角の神曲をマイナーカプで書いてなんかすみません、って感じです。
しかしこの二人しか思い浮かばなかったんですよ。
というか、ロミジャスの初期カプ設定がまんまこの曲なんですよね。
最近は『裏世界設定』でばかり書いていましたが、初心に戻って何の付加もつけないロミジャスを書いて、イメージぴったりな事に自分自身が驚いてます。
ボカロなんて知らない時期に作った設定なんだけどな……

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