特殊作品

□短編集
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君の名に花束を





この海の広がる丘の上へ墓参りにしにくるのも何百回目、否、何千回目だろうか。
MZDは朽ち果てている墓に花を添えて、痛そうな笑みを浮かべた。


時は全ての人に平等に、無慈悲に与えられる。

しかし世界そのものの擬人化と言えるMZDは、同じように与えられても影響がほとんどないのだ。

だから世界の全てを愛しても、特定の誰かを愛する事だけは……誰も救われないからしないと決めていたのに。

「お前の所為だぞバカヤロー。お前が、俺を認めるから……」

MZDは、神だ。
この世界そのものだ。
だから無条件で愛されると同時に、無条件で嫌われる。

覚えている限り嫌われた記憶の方が多い気がするのは、嫌な事の方が覚えていやすいという心理的な理由だろうか。

その中で今でも不意に思い出す記憶がある。


『ここから見る夕焼けは、きれいなもんだな』


遠い遠い昔の記憶。

色褪せてもおかしくないのに、目を閉じれば細部まで思い出せる、多分、自分が『本当の意味で生きていた』日々。

彼は普段から無口で無愛想で、だからこそその言葉は胸に響く。
彼自信は何の事はない、ただ感想を言っただけに過ぎないのだろう。


『多分、これからどれだけ時間が経っても、この景色はきれいなままなんだろうな』


ああ、お前の言った通りだ。

お前が死んで、戦争で国が死んで、今では何もかもが塵になったけれど、此処からの景色は何も変わらない。

「変わらないのは、俺だけだと思ってたのにな……」

そう呟いた声は、確かに濡れていて。

認めたくなかった。
だけどあの時の気持ちは確かに本物だった。

とてつもない遠回りをしたけれど、今ならお前にこの言葉を贈れる。


「ナカジ、俺はお前が好き……だったよ」


涙に濡れたその声は、風に乗り遠く遠く流れていった。










────

BGM/地球最後の告白を
作詞・作曲/kemu
歌/GUMI

この歌は必ずMZDでやろう!と意気込んだのはいいんですが、イメージがちょっと弱かったようです。
明らかに、短い、よね!?
てか、慣れないカプでやるもんじゃないなと思った。
今更ですが。

拍手掲載日 H25/11/25〜5/6
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