特殊作品

□《ケツァール》の始まり
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1、遙か天空の城を求めて





大陸の遙か北方に広がる高知、其処には巨大な木を町の神木と崇める《ハイ・ラガード》公国があった。
その公国の神木は世界樹と呼ばれ、その天高く伸びる木は空飛ぶ城へと繋がっているという伝説があった。
そんな伝説の木の中に、ある時謎の遺跡群と未知の動植物を内包した巨大な自然の迷宮が見つかったのだ!
その地を収める大公は、その迷宮を調べ空飛ぶ城の伝説の真偽を確かめる為に、大陸全土に触れを出した。
空飛ぶ城の伝説と広大な迷宮…
この触れは冒険者の心を捕らえ、多くの者達が公国に訪れた。


そして此処にも、その世界樹に挑戦しようとやってきた冒険者が二人……





「やっと着いたな」
「ああ、到着だ。『永遠の世界樹』の国、《ハイ・ラガード》!!」

最初の声はケイ=カサハラ。
通称KKという新人のガンナーだ。
元々は故郷で……人には言えない仕事をしていたが、諸事情で冒険者となった。
その為、新人としてはそこそこの腕前をしている。

もう一人はオサム=ランドウ。
諸事情からDTOと名乗っている、新人のパラディンだ。
此方は本当に初心者なので、パラディンにしては装備がやや頼りない。
だが彼が持っていたお金では、安めの装備を揃えるのが精一杯だったのだ。

それはまた別の話でしよう。

とりあえず新人冒険者の二人、彼らは今一番冒険者が集まっているだろう場所、《ハイ・ラガード》へとやってきた。

お金の為、生活の為、やり直す為、名誉の為。

理由なら幾らでもある。
その為に命を懸ける覚悟も出来ている。

何処まで行けるか分からないけれど。
でもやるだけやった方が、生きていると実感できるし。
何より後悔したくない。


だから二人は此処まできた。

今まで持っていたもの、全て捨てて。


「で、これからどうすればいいんだ?」
「《冒険者ギルド》ってとこに行って、冒険者登録しなきゃならねぇみたいだな。登録しないと世界樹に入れねぇみたいだし」
「カードみたいなの、兵士に見せてるしな」

適当に歩いていただけなのだが、二人は気付けば迷宮近くにきていた。

見上げる世界樹。
上の方は霞んでいて、肉眼では見えない。

「でかいな」
「この中が途方もない迷宮だなんて、信じられねぇよ」
「……そうだな」


「おにーさん達、そんなとこにいたらみんなの邪魔だよ」


びっくりして、声のした方に振り向く。

首にかけたゴーグルに、羽根付き帽子。
矢筒とやや大きめの弓。

恐らく、否、確実にレンジャーだ。
しかも、手練れの。

目の色が、雰囲気が、彼を中々のやり手だと示す。
両手を見れば、長い事弓を引いてきた証があるだろう。


だが次の瞬間には、違和感が過ぎった。
共に迷宮へと挑む仲間の姿が見当たらない。

レンジャーは基本的には後衛向きの職業だ。
否、前衛が出来ないわけでもないが、後衛にいた方が彼らの実力は発揮される。

だが、その前衛を任せる仲間達は?


「悪ぃ、今退く」
「おにーさん達、新人?」
「何でそう思うんだ?」
「迷宮に入ろうとしないじゃん。此処には迷宮に入る以外、する事ない場所だよ」

確かに。
此処に来る冒険者は黙々と迷宮に向かうだけだ。

偶に民間人が来るが、そういう人は着ている物で分かる。
自分達のように完全装備で来る民間人なんていない。

「冒険者登録してないでしょ。ギルドの場所分かる?」
「……案内、してくれるのか?」

KKが胡散臭げに相手を見る。

やばい仕事をしていたのを知っているから、無条件で親切にしてくれる人を疑う気持ちは分かる。
だから苦笑して断ろうとしたが、その前に男性に言い返された。

「別に下心なんてないよ。新人にお金せびるほど貧乏でもないし」
「でもいいのか? 登る予定だったんじゃ…」
「いーのいーの。どうせ一人だし」


その言葉にKKとDTOは顔を見合わせた。



「……なぁ、お前の仲間は?」



その問いに男性は笑うだけで、答えようとはしなかった。





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