【ワイルドヘヴン】

□Number-03
4ページ/12ページ

暫くぐずっていたが、やはり外の世界が見たいという好奇心に勝てなかったのだろう、チュニは口を尖らせて排水溝に潜っていった。
が、再び顔を出し
『おかーさん…』
一声鳴いた。母は思った。この子は気付いているのかもしれない、と。
『行くの。ほら。ぐずぐずしない』
母親は不自由な体を引きずって排水溝に近寄ると、最期にチュニの柔らかい頭を抱きしめた。
『ミミナに帰るの。そしたらいつでも会えるから』
ニャア、と、意味を持たない音を発してから、チュニは暗い排水溝に姿を消した。
母親は、溜め息をつく。檻の端のクッションに戻る気力は無い。そのまま、目を閉じた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ