【ワイルドヘヴン】

□Number-28
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水上秋月は今、ようやく父親の呪縛を振りほどこうとしている。そしてそのために、ずっと変わらず自分を憎み続けた親友に別れを告げようとしている。それは仕方のない事だった。
仕方がない。
だけど純三くん、僕が本当に心から淋しいと思っている事が、きっと君にはわからないのだろうな。
秋月は、わざと薄っぺらい笑顔を作る。追い詰められた鼠のように冷蔵庫に貼りついた佐古田は、困惑と焦燥から、ズレてもいない眼鏡を押し上げる動作を繰り返し、秋月にはそのどうしようもない正直さに憎悪と憐憫、相反する感情を同時に抱いた。
「あの時、僕を殴ったのは、なぜ?」
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