【ワイルドヘヴン】

□Number-06
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手土産の「吉祥寺ささのは」羊羹を下げ、尾沢は古びたアパートの前で立ち尽くしていた。
…うちよりボロいっ。
あずき色した、今時見かけぬ安普請のアパートの一室が佐古田の自宅であった。表札も何も無い、104号室のインターホンに、恐る恐る指を伸ばしたその時、中から硝子の割れるような音がして、尾沢はビクリと肩をすくめた。
「クソッタレ!大人しくしやがれこの野郎ッ!」
佐古田に間違いない怒鳴り声も響いてくる。尾沢は佐古田に折檻される憐れな何者かの姿を想像し、慌ててインターホンを押した。
ピンホーン…
途端に水を打ったように静かになるドアの内側。
「さ…佐古田さん?」
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