【ワイルドヘヴン】

□Number-12
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朝9時。
ピンホ〜ン
幾度目かのチャイム音に、何の前触れも無く、建て付けの悪いボロアパートのドア-が蹴り開けられた。
「うるせえ!誰だ!」
佐古田の来客への横暴な対応に、前回同様、うわっ、と飛びのいた尾沢は
「…え、えーと…おはようございマス…昨日は途中で帰っちゃってすんませんした」
へら、と曖昧な笑顔で、みめ屋の黒豆どら焼きを差し出す。
「何しに来たテメー…」
佐古田はそう言ったきり尾沢を睨みつけて黙った。朝方のクリーム色の光が眼鏡に反射して、表情が読み取れない。しかし尾沢は、既に学習していた。
「…ここのどら焼き、美味しいすよ」
カサカサ、と袋を鳴らす。
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