【ワイルドヘヴン】

□Number-13
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音楽。
それに乗り込んで、7歳のミツ少年は再びまぼろしの中に滑り落ちてきた。やさしい幽霊たちが抱きしめてくれる、この島の深い森の中だけが、彼の居場所。
とても落ち着く。
カラスバト、イイジマムシクシ、コマドリ、アカヒゲ、カケス、ヤマガラ、ミソサザイ。

真っ赤なシャクナゲ。
杉の樹に寄りかかって、少年は島の外から聞こえてくる音楽に耳を傾ける。
素晴らしき、この、世界。
そんな風に歌う外国の昔の歌手はもう、既にこの世にはいなかった。素晴らしかったこの世界も、既にこの世には無いのだ。
少年は目の前を横切った羽虫の幽霊に向かって
「淋しいね」
と、小さく呟いた。
 

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