【ワイルドヘヴン】

□Number-17
1ページ/16ページ

テーブルの下、膝の上で両手を組み、尾沢は考え込んでいた。向かい側では佐古田が、東風商人独特の偽中国風の彫りの入った木椅子を傾けて眉間に皺を寄せている。
「へい杏仁おふたつっ」
店主が運んで来た杏仁豆腐を一口食べた尾沢の思考は一旦途切れた。
「あ。口の中でとろける」
そう呟いた尾沢を、佐古田は
「杏仁に夢中になってんじゃねえよ、考えろ」
と睨んだが、自身も豆腐の上に乗った枸杞(くこ)の実をスプーンで掬い上げる最中だったので迫力は半減している。水上を出し抜くチャンスを失った佐古田は若干、落ち込んでいるように見えない事もなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ