【ワイルドヘヴン】

□Number-19
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天井のカメラがそっぽを向いた瞬間を狙って、よく磨かれた無機質な床の上を大きな段ボール箱が駆け抜けた。
「遅ェんだよ、馬鹿!たらたら走りやがって。お前には泥棒の素質がねえ」
ステンレスのロッカーの陰に隠れた途端、箱の中でそう囁いた佐古田に、尾沢は
そんな素質べつに無くていいし、僕が言わなければ監視カメラの存在すら思いつかなかったアナタに言われたくない…
という複雑な感情を抱いたが、その文句は床を通じて感じた硬い靴音の振動に凍り付いた。
「……!」
だれかきましたよう!
声には出さずに尾沢が佐古田の背中を突くと、微かに舌打ちが返ってきた。
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