ガロッツのブルース

□case-06
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底辺の人間が運命に流されやすいのは、ポケットに入ってる金の重さが足りなくて、錨の代わりにならないせいだ

:ジェットン

会場に流れたテレパシーアナウンスに、俺は触角を疑った。なんてこった、相手の犬が急性重力アレルギーひきおこして不戦勝だと?おいおいおいマジかよ!唖然とする俺の横でキュウが笑い転げている。
『ぶっは、何これやべえこれ同じトーナメント中、2回も相手に触れずして勝つとかどんな天才だよギャハハハハハ天才すぎだら!』
「おま、笑ってる場合かよ分かってんのか?お前これで来週の決勝トーナメント行き決定なんだぞ、おい、」
信じきれなかった。興奮でガタガタの波長になってしまった俺のテレパシーを、キュウの頭のガロリンガルはちゃんと訳してくれただろうか、自信がない。
だって予選トーナメント5戦中2戦が不戦勝だなんて、どう考えても異常すぎる。それも2回とも勝てる見込みのない相手と当たるはずだったのだ。
『えーそんなことねぇべ、当たってても勝ってたってマジでマジで』
と、キュウは言うが、別に今期の調子が特別良かったというわけでもないし、相変わらず勝ってもギリギリ、紙一重というような危ない試合内容ばかりだったにもかかわらず、何故そんな口がきけるのか俺には理解できない。現に1つ前の、純正ルピウス犬との対戦などひどいものだった。バーチャルゲーム機で見たかっこいい技を試すなどと言い出したキュウは俺が止めるのも聞かずに見事にきれいなカウンターをくらって場外までぶっ飛び、開始10ケッタでほとんど前後不覚みたいな事になってしまった。幸いにも相手がそれで大分油断してくれたおかげで、その後なんとか巻き返せて判定まで持ち込めたが、あれは本当に最低だった。
「信じきれない…どうすんだよマジで…お前、どう考えても決勝トーナメントってレベルじゃねえじゃねえか…」
『ウッフ、そうビビんなよって!別に実力じゃなくてもグーゼンでも勝てば賞金もらえるだショ?いいじゃんまぐれ勝ち狙いでよー』
「実力ねーの認めてんじゃねえか」
『光るものはあるとおもうのす!』
「自分で言うなよ…」
だがそれを一番信じているのは他ならぬ俺である。キュウは原石なのだ。時々、本当に時々だがコイツは、恐ろしく鋭い攻撃を繰り出したり、絶体絶命状態から平気で起き上がったりすることが実際にある。それを常に発揮できるようコントロールできれば鉄板と言われる闘犬になれる、はず、だ…と、俺は思ってる。たぶん。
だがキュウは俺の相棒である。つまり原石を磨くのは俺しかいない。
「ああ、わかった…」
『ん〜?』
「作戦会議だ、エンラエの店行くぞ。俺が必ずお前を勝たせてや…」
『キャッホーゥ!惑星ビール!ルルサ虫唐揚げっ!おかわりしていい?おいっ!おかわり何杯まで?』
「人の話聞けよてめえ」
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