飛ぶ探偵

□flight-06
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一夜明けて、事務所に顔を出した清治は、意外にもきちんと椅子の上に鎮座ましましている七見の姿に驚いた。
「お前、ショックで寝込んでるかと思ったぜ」
「馬鹿にするな。あ、あんなもの怖くなんかない」
言いつつも七見の細い指は安楽椅子の皮を、ぎゅうと握りしめている。
ああ、こいつ独りで家に居るのが怖くなったな。
という事が清治には一瞬にして知れたが、口には出さなかった。無理もないと思ったからだ。何しろ目の前で人が、倒れたのだ。それも依頼人を装って七見を探っていた野上美雪が、口を割る直前に、である。
口封じ、
その可能性は充分に考えられた。
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