知らない。

□思い出
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ガ嶋が死んだ。
昆虫ショーを見に行った帰り道、ふと立ち寄った総合病院で運命の歯車に巻き込まれ、全身の骨という骨がダイヤブロックになってしまったのだという。気の毒な話だ。
ガ嶋とは、そこまで親しくはなかった。高校が一緒だっただけで。けれど、奴と俺との間に、一つだけ思い出らしい思い出があるとしたら、それは間違いなく修学旅行の夜、二人で行った二次元空間だろう。
厚さのなくなったガ嶋が、ふざけた描き文字で、
吸血鬼みたい
と言ったのを、俺は今でも鮮明に覚えている。
ガ嶋の棺に手を合わせ、焼香をしながら俺は呟いた。
…ガ嶋、今はお前の方が、吸血鬼みたいだな。

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